住宅メーカーが花粉症問題に取り組むワケ

そんななか、花粉症対策に積極的な取り組みを行う民間企業が出てきた。住宅メーカーのタマホーム株式会社だ。

企業CM「いつか花粉症がなくなる日まで。」より

同社は昨年10月、大分県ならびに大分県森林再生機構と「花粉の少ない苗木による再造林の推進に関する協定」を、同11月には宮崎県ならびに宮崎県森林組合連合会と「伐って使ってすぐ植える花粉の少ない森林づくり協定」を、それぞれ締結。再造林時の花粉症対策苗木・植え替え支援を行うことを表明した。合わせて昨年12月より、花粉症対策苗木の植林支援を紹介する企業CM「いつか花粉症がなくなる日まで。」を放映している。

大分県、宮崎県、および森林組合連合会等の間で締結された協定の締結期間は、2016年度から5年間。同社は花粉症対策苗木による再造林を推進するため、植樹に使用する苗木の費用を寄付する。

そうした取り組みについて、タマホームの取締役で工務本部本部長の竹下俊一氏は、次のように説明する。

「弊社は長年、良質な国産木材に強いこだわりをもって住宅づくりを手がけてきたメーカーです。現在、タマホームで使用している木材は72.3%が国産になります。それだけに、日本の花粉症問題は弊社としても重要な課題だととらえており、何かできないだろうかとかねてより考えてきました。そこで大きなヒントになったのが、『我々が積極的に国産木材を使用して、花粉を出すスギを減らしていければ、花粉症対策に繋がるのではないか』という視点です。加えて、国は少花粉、無花粉のスギ苗木による再造林を加速させる政策を掲げています。それらを踏まえて発案されたのが、今回の自治体や森林組合とコラボレーションする形での協定締結でした」

手がける住宅に国産木材を多用することで、日本の森から花粉を出す木を減らす一方、1棟建てるごとに10本、花粉症対策苗木を植えていく。そうすることで徐々に日本の森林を「花粉の出にくい森」に変えていく。それがタマホームの提唱する「花粉を減らすサイクル」だ。

合わせて、このような取り組みはビジネス面でも有意義である、と竹下氏。

「我々住宅メーカーは、木を育ててくれる方々がいないと成り立たないビジネスです。メーカーが国産材を使うことは日本の林業の活性化にも繋がり、森で仕事をする方も増えていくでしょう。林業の就労人口が増えることは、結果として木材の安定供給にも繋がるわけです。それは我々にとっても大きなメリットといえます。微力ではありますが、林業のボトムアップのお手伝いもしたいと考えています」

タマホームでは、そうした取り組みをエンドユーザーにも知ってもらおうと、森林ツアーのなかに花粉症対策苗木の植樹を盛り込みはじめた。伐採現場や育苗施設の見学、植樹体験などを組み合わせた森林ツアーを開催しているハウスメーカーや工務店は少なくない。が、花粉症対策苗木に実際に触れることができるツアーを展開している例は、いまのところ極めて稀有である。