就職に余裕を感じ、大手・安定志向
企業が採用に対して危機感を強めていく中、学生はといえば、バブル期に採用された世代を髣髴させる傾向が見られる。
大きな特徴のひとつは、内定を取ることに対する余裕感である。特に優秀でない先輩が大手企業から内定をもらったり、「就活は超余裕だった」といった話を聞いたりすることで、「それならば自分も大丈夫だろう」と考えてしまう。これは有効求人倍率が高まっている際に顕著な現象だ。
また、大手企業が求人数と採用予算を増やし、求人プロモーションを強化するようになると、より多くの学生が大手企業の情報を得る機会が増える。そのため、大手企業への憧れを持ちやすくなり、大手・安定志向が強まっていく。
「就社」志向では早期離職へ
このように就職環境がよくなるほど、学生の行動量は減少し、会社や仕事への理解不足が進行する。採用ツールの多様化によって、従来の「たくさん集めて、たくさん落とす」から、マッチングを重視した採用活動に移行しつつあるのに、学生が「就職」ではなく、狭い視野の「就社」志向であっては、早期離職問題も改善されまい。
ある大手企業の人事は次のように語った。
「確かに今は採用されやすいし、働きやすい世の中になりつつある。それでも学生は『なんて楽なんだ!』と短絡的に喜ばないほうがいいでしょう。同じような状況でバブル期に入社した先輩には、会社に貢献できない“残念”な人材が多い。その二の舞いにならないか、心配しています」
ただし、一部の学生は早く活動したほうが就職活動は有利であることを理解しており、今後、「動く・動かない」の二極化が進むものと思われる。後者の学生は売り手市場の恩恵を甘受するだけでなく、まずは自分の人生を最終的にどうしたいのか、考えておくべきだ。そして他人との比較で満足するのではなく、自分が納得できる就職活動をしてほしいものである。