ルール変更で「採用活動」長期化の弊害が
一体、誰のためのルールなのか。2016年春卒業予定の大学生などを対象に、日本経済団体連合会(経団連)が今年、企業の新卒採用活動の開始時期を大幅に繰り下げたルールが初年度で大きくつまずいた。
ルール変更でさまざまな混乱が生じ、企業、学生の双方から不評を買った経団連は11月9日、早々と16年のルール変更に踏み切る方針を表明した。これに大学側は「現行通り」を主張したものの、最終的に折れ、経団連は11月20日、17年春卒予定者に対する面接など選考解禁日を2カ月前倒し、6月1日にすると発表した。2年続けて「ネコの目」のように変わる事態に、翻弄されるのは議論で蚊帳の外に置かれた学生ばかりだ。
今年の就活シーンは、昨年までと大きく様変わりした。政府の要請もあり、経団連が面接などの選考解禁を従来の4月から8月に、会社説明会などの広報活動解禁を3年生時の12月から3月にそれぞれ繰り下げる新ルールの順守を会員企業に要請したからだ。結果的に、就活、採用活動の期間が長期化し、双方ともに負担が増すなどマイナス面が際立った。
これを受け、経団連は11月9日の会長・副会長会議で、会員企業の選考解禁時期を2カ月程度前倒しする方針を確認した。経団連の榊原定征会長は従前「本質的な問題点が指摘されれば、躊躇なく見直す」と語っており、即、実行に移した格好だ。
しかし、ルール変更はそう簡単ではない。来年の就活も再び学生が振り回されかねない事態を懸念した大学側は、11月4日に開催した全国の国公私立でつくる就職問題懇談会で、採用活動開始時期を「現行通りとすべき」と結論付けた。さらに、政府は加藤勝信一億総活躍担当相が関係方面から意見聴取する会議を11月4日に招集し、経団連の一存だけでは決まらない。