「渦中での省察」から戦略行動が生まれる

この標準装備化は、さらに新たな付加価値をコマツにもたらすことになった。コマツは、それらをひとつ一つ実現化していき、現在では先の(1)~(4)のような付加価値を実現している。

KOMTRAXがもたらす付加価値のすべてを、コマツは読み切ってからその開発に踏みきったわけではない。開発をはじめることでパートナーが現れ、有料オプション販売の見込み違いを経て自社負担で標準装備とする決断をしたことで、さらに新たな可能性が生まれる。このようなプロセスを経て、KOMTRAXに潜在していた付加価値を、コマツは自社の事業のなかに顕在化していったのである。

KOMTRAXの事業化のプロセスは、コマツが未来を予測できていたから実現したのではない。すべての可能性はわからない。そのなかで開始した行動の渦中で、次々に出現する課題に立ち向かうとともに、そこから生じる新たな事業上の可能性を見逃さずに貪欲に取り込み、次なる行動につなげていく。このような「プロセスに先立つ予測」ではなく「プロセスの渦中での省察」から戦略行動を生みだしていくことにより、コマツはKOMTRAXの事業性を高めてきたのである。

一年の計は元旦にだけあるのではない。行動をしながら日々自らを振り返り、計を練り直す。未来が予測できないからこそ、このような日々の取り組みが重要となる。

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