低成長下で、どう儲けるのか

2017年という新しい年を迎えた。これからのマーケティングの歩みを考えるには、よい節目だと、思いをめぐらせる。百花繚乱ともいえるトレンドが、産業や企業ごとに咲き乱れる。これがマーケティングである。そのなかに、あえて共通の産業横断的なトレンドを探れば、21世紀に入ってからは、IT化とグローバル化が、産業横断的な成長の2大エンジンだったといえよう。

ところが昨今では、この2つのエンジンの変調が、誰の目にも明らかになりつつある。新しい年を迎えて、マーケティングの視界が晴れないひとつの理由は、ここにある。

ITや自動車だけではない。医薬などの分野でも同じことがいえる。これらの技術のフロンティアにおいては、開発の難度が高まるとともに、その開発費用が高騰している。費用負担を考えると、先端技術の開発は、世界的な優良企業であっても、他社との提携を抜きには進めることが困難になっている。日本企業が、これまでのようにイノベーションへの投資によって収益性を高めることができるかは、不透明になってきている。

一方のグローバル化については、世界の貿易は2010年頃までの25年ほどの間に10倍近くに急拡大した。しかし2010年代に入り、世界の貿易は明らかに伸び悩んでいる。そのなかでヨーロッパ、アメリカ、そしてアジアの主要国と日本との通商関係は転換期に入りつつある。日本企業が、これまでのように海外への事業展開によって成長を実現できるかについても不透明になってきている。

とはいえ、人口減に向かう日本の国内においては、成長のエンジンを託すことができる確実な市場トレンドを他に見いだすことも難しい。インバウンド観光は今後の日本の産業の成長エンジンのひとつの候補だが、「爆買い」をめぐるこの2年ほどの狂想曲を体験した今、いえることは、このエンジンの出力は、為替や国際関係や各国の政策しだいで、その動きが猫の目のようにクルクル変わるということである。