やる気が持続するには内発的動機づけが大事
逆にやる気を生み出す要因にはどんなものがあるか。「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」という2つの動機づけがあることを知っておこう。
外発的動機づけとは、人の外部からの誘因で動機づけすることだ。たとえばビジネスの現場でいうと、給与アップやボーナスなど金銭的なご褒美、昇進や花形部署への配置転換、充実した福利厚生制度などがこれに当たる。そうした見返りを求めてやる気を出そうとするのが外発的動機づけだ。外発的動機づけは短期的には効果があるが、物理的な限界があるという欠点もあり、長続きしない。たとえば、全員を部長に昇進させるわけにはいかないだろう。
対する内発的動機づけとは、自分の内側から湧いてくるものだ。自分で目標を定めるため、達成感や成長の実感を得やすい。物理的な限界はなく、自分の考え方次第で無制限に動機づけができる。そのため、やる気を持続させるには、内発的動機づけが重要だとされている。
行動イノベーションの専門家である大平信孝氏は、うまく内発的動機づけを生かしてやる気を引き出すには、仕事に対して適切な「意味づけ」をするといいと説く。アドラーも「一般的な人生の意味はない。人生の意味は自分自身で与えるものだ」という趣旨のことをいっている。「自分はこの職場に求められている人材だ」とか「今の仕事は確かに辛いが、この経験が次に生かせるはずだ」など、現在の職場、仕事の意味を自分で決めることが重要だ。
大平氏いわく「いつもうまくいっている人は、例外なく意味づけが上手。自分が置かれている状況が変わるたびに、新しい意味を見出し、やる気が自然に湧いてくる状況をつくっている」。意に沿わない部署に異動した途端、すっかりやる気をなくしてしまった。そんな経験がある人は、外発的動機づけに頼りすぎていたのかもしれない。
やる気のなさそうな部下に、上司が「もっと頑張れ!」と発破をかける場面をよく見かけるだろう。しかし、前述したことからわかるように、この台詞は部下のやる気を引き出すために有効な方法とはいえない。
組織人事コンサルタントであり、アドラー派の心理カウンセラーでもある小倉広氏は、「『頑張れ』といわれた人は『今のままじゃダメだ』といわれたように感じる」という。そして、それにより「心のガソリン」が減っていき、余計にやる気が出なくなる、という。
「人は心のガソリンがあれば失敗を恐れずチャレンジをするが、ガソリンが空になると、チャレンジをしなくなる。『頑張れ』と声をかけることは、ガソリンをつぎ足すことよりも、むしろ減らすことにつながる」(小倉氏)。では、どうすれば「心のガソリン」は増えるのだろうか。