当たり前の行為を成功体験にしてみる
「心のガソリン」を注ぐためには部下に「頑張れ」というよりも、小さな達成感や成功体験を積ませるほうがずっと効果的だ、という。その意味で小倉氏は、自身も常に「スタート・スモール」を心がけているそうだ。小さな目標を掲げコツコツと達成していくのである。
たとえば、会社員を辞めて独立をしたいと思う人がいたとしよう。しかし、なかなか踏み出すことができない。そんなときは「いきなり会社を辞めるのではなく、独立に向けて資格にチャレンジするとか、英語の本を開くとか、あるいは、毎朝、30分早く起きるだけでもいい」(小倉氏)。どんどんハードルを下げて小さな成功体験を重ね、心のガソリンを補充していくのだ。
「大切なのは、成功体験の大きさではなく回数。大きな成功体験でドーンとやる気が出ることは滅多にない。それよりは、小さな成功体験の数を積み重ねるほうがいい」(小倉氏)
そこで有効なのが、当たり前のことに注目することだと小倉氏はいう。アドラー心理学では、「正の注目」と呼ばれる。毎朝歯を磨くとか、ネクタイを締めて靴を履くとか、人間の行動の95%は「正しい行い」だ。誰しも日々、無数の正しい行いをしているのだが、当たり前すぎて「成功体験」としてカウントせずに、ダメな5%にばかり注目している。そうではなく「当たり前の成功体験」に注目するのだ。そうすれば成功体験の回数が増え、心のガソリンも増えていくことだろう。
勇気がくじかれて、やる気をなくしてしまった人は、非建設的な行動に走りがちだ。その典型例が次の7つの症状である。
(1)周りを気にしすぎる「『超』気配り型」
(2)目の前の仕事に集中できない「集中力分散型」
(3)理想ばかり追って地に足のつかない「理想追求型」
(4)考えすぎて、なかなか行動を起こせない「熟考スロー型」
(5)朝に弱く、日中にエンジンがかからない「夜行性型」
(6)いつも家人の問題に振り回される「家庭トラブル型」
(7)プライドの高さが邪魔をしがちな「自尊心ガード型」
このうち1つに当てはまる人もいれば、重複して当てはまる人もいるだろう。連載:【性格弱点別】人生を変える7つの習慣では、この7大症状別に「やる気が湧く行動習慣」を紹介していく。どれもまったく頑張る必要のない小さな行動ばかりだ。自分の自覚症状に照らして実践し、本来のあなたのやる気を取り戻そう。
ヒューマン・ギルド代表取締役、中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。カウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行う。
アンカリング・イノベーション代表取締役。目標実現の専門家。独自に開発した「行動イノベーション」により、日本大学馬術部を2度の全国優勝に導くなど活躍。
小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。リクルート、ソースネクスト常務、コンサルティング会社代表取締役を経て現職。