非正規社員の待遇改善に必要な考え方

さて、冒頭の同一労働・同一賃金。職種ごとの給与水準が確立しているヨーロッパなどでは「同じ仕事に従事しているならば、正規・非正規、性別や国籍といった違いで賃金差を設けてはならない」という方針に対して、企業ごとのチェックは比較的容易ではないかと思われます。

ところが、日本では、一企業内における職種ごとの賃金水準という概念が希薄です。一方で、パートタイマーを中心とする非正規社員の給与は「職種別」に決められていることが多い。パート社員においては、本社事務職と工場の製造職、倉庫職などは、明らかに時給水準が異なっていたりします。

そこで、職種が特定できる非正規社員に対して、「正社員の総合職」との賃金比較が成り立つか、という問題になるのです。もし仮に、同一労働・同一賃金が法制化されたとしても、企業は「ウチの正社員は全員総合職です。非正規社員に総合職の人はいませんので、比較対象がありません」と言えば、それで通ってしまうのではないでしょうか。

私の結論は、非正規社員の待遇改善のために同一労働・同一賃金といった概念を持ち出さない方がいい、という考えです。「最低賃金の大幅な引き上げ」+「配偶者控除の廃止」くらいのシンプルな施策の方が、目的実現には近道だと思います。

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