東京のノウハウはもう地方には通用しない

地方創生を考えるとき、現状認識として「活力ある東京、ダメな地方」と決めてかかることは禁物だ。「東京の優れたノウハウを地方に注入したら、地方が創生するだろう」とトライする人がいるが、ことごとく失敗している。

東京のノウハウとは、大企業のノウハウのことだ。大市場相手に効率的に供給するシステムを専門スタッフが分業して構築する、いわば「トヨタ化を推進するようなもの」と言っていいだろう。しかし、そのやり方は、市場が小さく人材も限られたが地方では通用しない。本当のことを言えば、この東京のノウハウは東京ですら通用しなくなっている。好みの多様化で市場が細分化しているのに、旧来の「専門スタッフ」は対応できず、間接費の塊となっているのだ。地方の現場に立って、未来に通じるノウハウを研究したほうがいい。

道の駅の魚市場のつくり方などは、その典型。生の水産物は供給が安定せず、客が多い週末にまったく獲れないなんてこともあり得る。だからといって他産地のモノを入れたり、冷凍品や加工品を入れたりすれば、大手スーパーと変わらない品揃えになってしまう。それではだめなことはイトーヨーカドーもイオンもスーパー部門が赤字であることを考えればわかるだろう。「いつでも・どこでも・誰にでも」ではなく、「今だけ・ここだけ・あなただけ」を売り物にして、今あるものに付加価値をつけて高く売るノウハウが必要なのだ。

他方で地方にも、「いつでも・どこでも・誰にでも」を求める市場はある。業績好調のセブン-イレブンは、東京に限らず、高齢化した超過疎地の店舗でも、こうした需要を掘り起こして黒字だ。その陰には、地域によってこまめに商品構成や味付けを変える工夫がある。