東京都への転入者は4.7%増

再び東京への「一極集中」が始まったのだろうか。総務省が1月末に発表した2022年の人口移動報告によると、東京都への「転入者数」が43万9787人と、21年の42万167人から1万9620人、率にして4.7%も増えた。

一方「転出者数」は3.1%減っており、転入転出の差である「転入超過数」は3万2590人となった。新型コロナ禍で在宅勤務が普及したことをきっかけに、東京から脱出して地方に移住するのがブームになっていたが、早くもそれが息切れした格好だ。

東京都の「転入者数」は新型コロナウイルスが蔓延した2020年、2021年と2年連続で減少、一方で「転出者数」は増えていた。全体としては転入超過が続いていたものの、新型コロナ禍でそのスピードが大きく鈍化していた。ところが、2022年は再び東京への「集中」が勢い付いてきたということになる。神奈川や千葉などを含めた「東京圏」でみても再び転入超過数が増加に転じている。大阪や名古屋、福岡など「都市部」が人を吸い寄せている。

地方の人口減少はもはや壊滅的になっている

もちろん、「都市」への人口集中は今に始まったことではない。総務省の統計によると、1955年時点で三大都市圏に住んでいた人は37.2%、その他の「都市部」を合わせても56.1%に過ぎず、国民の半分ほどは農村に住んでいた。それが高度経済成長期に入って、企業の人手不足を補う形で農村部から都市部へと急速に人は移った。給与収入が得られる「会社仕事」を求めて都市部へと人が集まったわけだ。1975年には都市人口は75.9%に達したとされ、世界有数の人口都市集中国家になった。

「東京への過度な一極集中を是正していきます」。岸田文雄首相は国会答弁でそう語っている。年初の施政方針演説でも「地方創生を進め、地方が元気になること。それが日本経済再生の源です」と述べていた。だが、現実は地方は元気になるどころか、人口減少はもはや壊滅的だ。

市街の街並み
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例えば、人口減少県としてしばしば取り上げられる秋田県の場合、1998年まで120万人の人口がいたが、2009年には110万人を割り込み、2017年には100万人を切った。2022年10月時点では93万人を下回った。まさに人口減少はつるべ落としだ。