山間部の集落では互助の仕組みも消滅した
一方で、「秋田市」に住む人の割合は1998年の26.2%から2022年には32.5%に上昇、能代市など他の「市」部に住む人の割合は90.9%に達している。もちろん、市域の拡大なども要因のひとつだが、人口が激減している地方の中でも都市部への集中が進んでいる。
「もはや毎月の寄り合いもできなくなりました」と岐阜県の山間部にある集落の古老が話す。この集落では毎月1度、家々から人が集まって、飲食しながら話をするのが習わしだったが、人口減少と高齢化でそれができなくなったというのだ。全国各地にある「無尽講」や「頼母子講」と言われる互助組織の名残りだろう。
集落の共同作業や、資金融通を住民同士が助け合うことで行ってきたコミュニティーの核である。自治体による住民支援など無かった時代の集落自立の仕組みだったと言える。もはや、地域の問題を住民自らが解決していくための「人手」がいなくなったのだ。また、そうした互助が当たり前という文化もすっかり消えた。
移住者向けの「田舎に住む7つの心得」
「都会風を吹かさないよう心掛けてください」
福井県池田町の広報誌に掲載された「池田暮らしの七か条」がネット上で大きな話題になった。「池田区長会」という自治組織がまとめたもので、移住者向けの「心得」が記されていた。中にはこんな文章がある。
「今までの自己価値観を押しつけないこと。また都会暮らしを地域に押しつけないよう心掛けてください。これまでの都市暮らしと違うからといって都会風を吹かさないように」
「プライバシーがないと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください。どんな人か、何をする人か、品定めされることは自然です」
「池田町の風景や生活環境の保全、祭りなどの文化の保存は、共同作業によって支えられているので、参加協力ください。『面倒だ』『うっとおしい』と思う方は、池田暮らしは難しい」
池田町は人口約2300人。毎年20人ほどが県内外から移住してくるという。区長というのは地域の世話役で、代々地域に住む「旧住民」の代表格。決して町議会など住民の代表というわけではない。ただし、代々のコミュニティー文化を何とか維持したいと考えているのだろう。やむに止まれず声を上げたと見ることもできる。しかし、「移住者」や若い住民からすると、とんでもない押しつけに感じるに違いない。