「青のあじさい寺」として有名な秋田・男鹿半島の雲昌寺。あじさいの株分けを20年間継続し、作り上げた“死ぬまでに行きたい絶景”だが、檀家離れに歯止めがかかっていない。副住職は、雲海のような青あじさいを背景にしたフォトウエディングや、あじさいの花びらを入れたお守りのグッズ開発など手掛け、「京都から取り寄せた桜と紅葉の株分けをして、花の名所にしたい」という。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんが現地取材した――。
副住職
撮影=鵜飼秀徳
副住職の古仲宗雲さん

「死ぬまでに行きたい絶景」でフォトウエディング

前回の本コラムで紹介した秋田・男鹿半島の「青のあじさい寺(雲昌寺)」の記事が、大きな反響をいただいている。記事の内容は、「副住職が青のあじさいの株分けを20年間継続した末に、『死ぬまでに行きたい絶景』をつくり上げた。その経済波及効果は大きく、寺と地域全体が活性化し始めた」――というもの。筆者はさらに副住職に取材し、現状の課題や最新の取り組み、地域の人口減少の現実などを聞いた。

筆者が雲昌寺を訪れたのは、あじさいの青色が濃くなり始めた先月中旬のこと。ひと組のカップルが応接間に入ってきた。続いて、大きな衣装ケースが運び込まれてきた。「雲海のような青あじさい」を背景にして、「フォトウエディング」をしようというのだ。副住職の古仲宗雲さん(52)はいう。

写真提供=雲昌寺
人気を博しているフォトウェディングの風景

「フォトウエディングは4年前から始めました。当初2年間の成約はワンシーズンに数組程度でしたが、コロナ禍になってぐっと需要が拡大しました。人を集めて宴会場で結婚式ができない状態のなか、カップルたちが満足できる結婚式を、とプランを探し回った末に、雲昌寺のフォトウエディングに行き着いたというわけです」

確かに、絶景のみえる広い屋外でふたりだけのセレモニーができるのは魅力的だ。2021年シーズンは21組。今年も、すでに20組近くの予約が入っているという。

イギリスの童謡『マザーグース』には、「結婚式でサムシング・フォー(something four=何か4つのアイテム)を身につけると幸せな結婚生活が送れる」との一節がある。

「Something old, something new, something borrowed, something blue, and a sixpence in her shoe」

(何か古いもの、何か新しいもの、何か借りたもの、何か青いもの、そして靴の中には6ペンス銀貨を入れて)

こうしたストーリーにのせて、ジューンブライドシーズンにおける雲昌寺の青あじさいの情景がシンクロする。「古いもの=お寺、新しいもの=あじさいの生花ブーケ、借りたもの=境内、青いもの=あじさい」である。

そこにコロナ禍による“逆張り”のニーズが相まって人気が高まっているというわけだ。確かに、「死ぬまでに行きたい絶景」の中で結婚写真が撮れるとあって、予約が殺到するのも頷ける。

価格は貸切料(夕方の1時間半)、衣装代、美容代、写真代がセットで29万7000円(税込)~という。このように、青に特化したあじさい寺、雲昌寺は多くの「副産物」を生んでいるようだ。