「春は桜、夏はあじさい、秋は紅葉、の花の名所に!」
「青いあじさいの花の近くのお墓で眠りたい」
そんな要望を受け、雲昌寺では今夏、あじさいの花に包まれた合祀墓の募集を始めた。価格は5万5000円/1柱と、県内でも「格安」の合祀墓だ。
都会に出た人が、故郷の墓をたたんでビル型の永代供養墓などに移す「改葬」が増えている。先祖代々の墓が完全に「墓じまい」され、遺骨が都会に移動してしまうと、もう二度と寺や故郷には戻ってこなくなる。墓じまいは、人口減少の種を生んでいると言っても過言ではない。
いかに、故郷の菩提寺にお墓を持ち続けてもらえるか。それが寺にとっても地方にとっても死活問題なのだ。古仲さんは、花のお墓と価格の安さで墓じまいによって長年住んだ土地との縁が切れてしまうのを食い止めようとしている。
雲昌寺は今後、どうなっていくのか。古仲さんにはさらなる夢がある。
実は境内に植えられているのはあじさいだけではない。古仲さんは、春は桜、夏はあじさい、秋は紅葉の、季節ごとの花の名所にしようという計画を描いている。いま枝垂れ桜とイロハモミジの株を、あじさいと同じように少しずつ増やし続けている。
「桜と紅葉は京都から取り寄せています。あじさいもそうですが、闇雲に植えてもダメ。境内を彩る植物は品種の見極めがとても大事なのです」
桜や紅葉は、あじさいとは異なり、大木になって寺が「名所」となるには数十年の時間軸が必要だ。しかし、古仲さんは次代のためにそれを続ける。持続可能な寺と地域づくりのために。