アベノミクスと日本経済への打撃は深刻

こうした声を背景に、ジョンソン前ロンドン市長らが率いる離脱派は移民の制限、主権の回復などを強力に訴え、一方の残留派は「離脱すれば不況になる」と経済的損失を前面に打ち出す形でしか対抗できなかった。

EUから離脱すると、イギリスはEU市場へのアクセスが難しくなり、関税の減免措置が受けられなくなる恐れがある。離脱通告から2年以内にEUと新たな貿易協定を結ぶことになるが、イギリスの輸出の約4割をEU向けが占めており影響は避けられない。

2008年のリーマン・ショックと比べても事態は深刻だ。今回の国民投票は単純に悪材料出尽くしとならない。当面、世界的に政治・経済の両面で不安定な動きを強いられるのは避けられそうにないからだ。

キャメロン首相は辞意を表明し、自らはEUからの離脱通告を行わず、次期首相にゆだねる意向を示している。これに対し、EUは速やかな手続きを求めているが、前例のないケースだけに予断を許さない。

また、今回のイギリスの動きがEU圏内他国に飛び火する可能性も否定できず、米国と緊密な関係にあるイギリスが離脱することで、EUの政治力の低下は避けがたい。イギリスのEU離脱で喜んだのは、主要国の中ではウクライナ問題で経済制裁の対象となっているロシアや中国のみとの見方もある。

日本経済への影響も深刻だ。イギリスに進出している企業は1380社。製造業は558社と4割を占める(帝国データバンク調べ)。EU向け輸出を計画していたトヨタ、日立などイギリス進出企業は企業戦略の見直しを迫られる。さらに為替相場が円高に動くマイナスも大きい。EU離脱ニュースが流れた6月24日は1ドル=99円台に急伸。ポンド安や円高が続けば、日本の企業業績の足も引っ張る。これまで急増していたインバウンドにもマイナスとなる。このままでは、アベノミクスと日本経済に急ブレーキがかかる。

世界経済を大混乱させたEU離脱。イギリス国民が示した民意は本当に正しかったのだろうか。

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