左派政権がデフォルトを招く

債務不履行(デフォルト)の瀬戸際にあり、ユーロ圏の信用不安を引き起こしているギリシャ。なぜこうなってしまったのでしょうか。発端は1974年の民主化で政権に就いた、パパンドレウ率いる中道左派の全ギリシャ社会主義運動(パソック)の採った政策です。パソックは支持母体が国家公務員の労働組合です。官公労を支持母体とする日本の民主党とよく似ていますね。このパソックが支持者に公務員のポストを気前よくばらまき、手厚い福祉を公約した結果、国民の5人に1人が公務員となり、膨大な人件費と過大な福祉予算によって、国家財政は傾きました。しかもGDPの13%超に達していた財政赤字を1%と偽るという国家ぐるみの粉飾決算によりユーロ加盟を果たす(2001年)と、ユーロの信用力を利用し、たびたび赤字国債を発行しては資金調達を続けたので、財政状態はますます悪化しました。

ギリシャの粉飾決算が明るみに出ると、ギリシャ以外にも財政赤字の大きかったスペイン、ポルトガル、アイルランド、イタリアなどにも疑惑の目が向けられ、軒並み国債が暴落、これらの国に貸し込んでいたドイツやフランスの金融機関もあおりを受け、ヨーロッパ経済は大混乱。統一通貨ユーロの信用も大きく損なわれてしまったのです。それでもEU(欧州連合)側はギリシャを見捨てず、公務員の人員削減、年金の減額、増税など緊縮財政を行うことを条件に、欧州中央銀行(ECB)が追加融資を行ってきました。

ところがギリシャでは、今年1月に行われた総選挙で「年金も公務員数も減らさない、増税はしない、カネは外から借りるが、返済の予定はない」という「反緊縮財政」の公約を掲げた、チプラス党首率いる急進左派連合(シリザ)が勝利。日本でいえば、共産党+社民党+反原発運動みたいな政権が生まれたのです。このためドイツを中心とするEU側が態度を硬化させ、デフォルトの危機に陥ったのです。

一般に左派政権は「大きな政府」を志向します。福祉を手厚くし、公共事業に力を入れ、国営企業を増やすから、歳入より歳出のほうが大きくなります。これまでのデフォルト経験国の多くが左派政権です。たとえば、アルゼンチンは過去に何度も対外債務のデフォルトを宣言していますが、イギリスとのフォークランド紛争(82年)で軍事政権が倒れ、民政移管で政権に就いた左派の急進市民連盟が、予算のばらまきを行ったことが原因です。