破綻すれば輸出増となるか?

そんな破綻国家ギリシャを、ユーロ圏が見捨てないのはなぜでしょう? それはギリシャがロシア(冷戦期はソ連)の南下政策に対抗する重要な位置にあるからです。ここを押さえれば、クリミア半島のセバストポリ軍港を拠点とするソ連黒海艦隊は地中海に出ていけません。逆に、ソ連側がギリシャを保護国化してしまえば、地中海や中東、アジアへのアクセスが容易になります。だからアメリカは、ギリシャとトルコに多額の援助を与え(マーシャル・プラン)、NATO加盟を認めたのです。この構図は今も同じ。ユーロ圏を構成するEU諸国は、ウクライナ問題などをめぐりロシアとは緊張関係にあります。EUに見捨てられたギリシャがロシアや中国に接近し、経済支援の見返りに軍事協力を認めたりすれば、ユーロ圏にとって軍事的な脅威となります。だからEU側も、ギリシャに「ユーロ圏から出ていけ」とはいえないのです。

実は地政学的にギリシャと似た位置にあるのが朝鮮半島です。経済的にほぼ破綻状態にある北朝鮮が崩壊しないのは、中国とロシアの支援があるから。北朝鮮は何度も債務を踏み倒してきた困った国ですので、本音では、両国とも積極的に援助したいわけではないでしょう。しかし、北朝鮮が破綻して、韓国に併合されるようなことになったら、半島全体が親米政権となるおそれがある。それは中国やロシアとの国境まで米軍が迫ってくることを意味するため、両国としてはなんとしても避けたい。だから、何度踏み倒されても北朝鮮に援助を続けるしかないのです。

図を拡大
(右)米ロ対決の要衝、ギリシャと朝鮮半島(左)1990年以降、対外債務のデフォルトを経験した国(出所:高城 剛『世界はすでに破綻しているのか?』)

ギリシャのチプラス首相はインタビューで「(ユーロ加盟国が)われわれをユーロ圏から追い出すことはないだろう。代償は甚大だから」と語っていました。これまでも最後はユーロ側が折れて助けてくれたから、今回も大丈夫だろうと高を括っているのです。そういうところは韓国も似ています。

日韓併合(1910~45)の間、日本が莫大な資金を出して、韓国のインフラを整備しました。戦後の65年に日韓基本条約を結んだときには、日本は韓国に対し5億ドルの経済援助を行いました。当時の韓国の国家予算は3.5億ドルです。97年のアジア通貨危機のときも支援し、通貨スワップを結んで通貨の安定を助けてきた実績もあります。それなのに韓国がいまだに日本に対し、植民地時代の謝罪と賠償を要求し続けるのは、要求すれば、日本は最後にはカネを出すということを、それまでの経験で学習したからにほかなりません。