成功法則4:個人客対策では、県が黒衣役になる

体客から個人客へ。変化の波は岐阜にも押し寄せた。団体客が現地旅行会社にツアーを申し込むのに対し、個人客の多くはネット上でホテルや航空券の手配ができるエクスペディア、アゴダ、ブッキングドットコムなどのオンライン・トラベル・エージェント(OTA)を利用する。そのため、岐阜県と提携する現地旅行会社や、OTAと縁遠い地方のホテルや旅館は厳しい状況に置かれる。そこで岐阜県は県でなければできない手を打ち始めた。

まずはネット対応だ。エクスペディアとマレーシアの格安航空会社エアアジアの合弁会社エアアジア エクスペディア(AAE)と提携。航空券と県内宿泊をセットにした個人客向け格安パッケージをつくってもらうと、共同出資でメディアミックスの広報宣伝を大々的に行った。これも現地の民と連携する岐阜方式だから可能だった。

成功法則5:中国には地道な情報発信

岐阜県は同時に中国、韓国、台湾へもアプローチを行ったが、攻略法がまったく異なったのが中国だ。「すべては限界から始まった」と、09年から中国を担当した北村和弘氏(現・飛騨県事務所振興防災課観光係)はいう。

「牛肉も物産も簡単には持ち込めない。空港もなく、知名度も低い岐阜は当初、旅行会社に団体ツアーをつくってもらえませんでした。限界を感じて思いついたのが逆の発想です。人々が岐阜に行きたいと思うようになれば、ツアーをつくってくれるのではないか。そこで個人向けに情報発信を始めました」

国外のネット情報にも規制がかかるため、現地のPR会社と組んで、中国のサーバーで岐阜のHPを開設。中国ではネット上の書き込みが次々転載され、口コミの拡散が威力を持つことに着目。有力ブロガーを季節ごとに岐阜に招いては、彼らの目線で情報発信してもらった。中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」の活用にもいち早く着手。「本当に地道な発信を続けました」(北村氏)。