努力はやがて実を結ぶ。中国最大のポータルサイト会社「新浪(シナ)」から12年に、ウェブを使った旅行情報の積極的な発信が高く評価され、スペイン、フランス、オーストラリアなど、そうそうたる観光立国と肩を並べ、日本の一地方都市の岐阜県が表彰されたのだ。
日本初の快挙だった。
すると、関西空港から、金沢、白川郷、高山と回り、富士山経由で東京に入り、成田空港から発つ中国の個人客の「新ゴールデンルート」ができた。
「個人客の動きにつられて、団体ツアーもつくられるようになり、逆の発想が現実になりました。岐阜は空港がないので、他の地域も巻き込まないとツアーをつくれない。岐阜が有名になることで他の地域も潤う。昔の弱みが強みに転じたのです」(北村氏)
一連の取り組みの最大の成果は、「岐阜は世界に通用すると自信を持つようになったこと」と古田知事は話す。岐阜県の海外戦略には「交流人口を増やし、人口減少社会を乗り切る」という目的がある。官が民を牽引するのではなく、官は舞台裏に回り、民の力を引き出す。インバウンドの活力を取り込む地方再生のモデルがここにある。
(上)2014年11月、フランス・コルマール国際観光展での知事のトップセールス。岐阜の地歌舞伎の役者も出演し、多くのフランスのメディアに取り上げられた。(左から)県職員。2010年の上海万博時前後に中国を担当した北村和弘氏。同時期に東南アジアを担当した加藤英彦氏。現在、観光誘客を担当する加藤晶子さん。
(葛西亜理沙=撮影)