インドネシアではこんなケースもあった。知事の訪問1年前、事前調査でインドネシアのテレビ局が初めて日本を紹介する番組を計画中との情報を入手。さっそくスポンサーに加わり、全8回中、岐阜の紹介を2回入れてもらった。13年冬、準ミスインドネシアをレポーター役とするロケ隊が来日すると、彼らが行きたい場所を取材してもらい、県側は全面協力した。
放映から半年後の同年秋、現地で岐阜キャンペーンが始まり、いよいよトップセールス本番。知事の人脈で借りた日本大使館公邸でのプロモーションでは、番組のダイジェスト版が映され、準ミスが岐阜での体験を披露。番組放映後に次々つくられた訪日ツアーも用意されていた。結果、以前は皆無だったインドネシアからの宿泊客が14年は5000人を超えるようになった。
事前の仕込みの徹底でトップセールスの成功確率を高める。岐阜モデルの勝ちパターンだ。
成功法則2:県が「現地の民(みん)」と連携する
官民連携というと、官が「日本の民」と組むのが通例だが、岐阜モデルが特異なのは、海外プロモーションでは「現地の民」を巻き込むことだ。
例えば、シンガポールで12年2月に1カ月間行ったキャンペーン。有名ショッピング街オーチャード・ロードにある高級セレクトショップ「atomi」と提携し、美濃和紙、木工、陶磁器などの伝統工芸品を集中販売する「岐阜フェア」を開催。atomiが岐阜に関心を持ったのも、前年の知事のトップセールスがきっかけだった。
さらに、現地で提携する3つの高級レストランでは2週間、飛騨牛を使った特別メニューを提供。飲み屋街ボート・キー地区では、数軒の店と岐阜の酒の飲み比べができる「地酒フェア」を共催。店頭には美濃和紙製の提灯を下げてもらった。キャンペーンは大成功。現地の民と組む意味合いについて、前出の加藤氏はこう話す。
「大きいのは、岐阜県がかけるお金が少なくても、高い広告効果が得られることです。こちらが売りたいものを宣伝するのはお金をかければいくらでもできますが、どれだけ効果があるかわかりません。これに対し、現地の民である彼らは売れれば売れるほど利益になるので、自主的に本気でプロモーションしてくれる。こちらがかけるお金の何十倍もの効果が得られるのです」
(上)城下町・高山市の古い町並み。(左下)の「宮川の朝市」とともに、散策する観光客で賑わっている。(右下)古田肇岐阜県知事。人口減少社会に向け、6年前に岐阜の観光、食、モノを海外に売り込む長期構想を打ち立てた。