「負けて強く」なれるか
原沢を指導してきた金野潤・日大男子監督によると、「負けて強くなるタイプ」という。そういう意味では、この敗戦は良薬にもなりうる。猛練習が身上の原沢だもの、さらに練習は熾烈を極めることになるだろう。重圧をはねのける自信をつけるためには、やはりそれが一番である。
『打倒!リネール』を考えると、まずは組み手がカギをにぎる。懐に飛び込んで、いかに間合いを詰め、リネールに距離をつくらせないようにするか。そのためには、パワーやスピード、技術がもっと必要となる。原沢得意の内またを警戒してくるだろうから、足技などを磨き、柔道の幅を広げたいところだ。原沢は思案する。
「(リネールは)他の選手より、総合的に頭ひとつ、ふたつ抜けていますし、何より、試合運びがうまい。奇襲技じゃないですけど、相手が予想しないようなことをやっていかないと勝てない。何かひとつ、ずば抜けたものがないといけないと思っています」
最大の利点は、過去の両者の対戦がゼロだということかもしれない。原沢には若さと伸びシロがある。未知の可能性がある。あと3カ月余。この「敗戦」を糧とし、若き柔道家のエネルギーのすべてを、リオ五輪の金メダルにささげるつもりだ。