たとえば、通勤需要が大きい朝の時間帯に無線で呼び出せるタクシーが不足しているという問題がある。深夜の時間帯を優先したシフト体制になっているため、朝の時間帯はそもそも稼働している台数が少ないことが原因だ。
「小売業にたとえれば、昼休みにお弁当を買いに出かけたら、工場や物流の都合で品切れしているようなものです。自分たちの仕事のやり方がお客様のニーズに合っていないのだから、見直す必要があります。会社が成長するには、まずは足元で取り逃がしているビジネスチャンスを探し、それを着実に積み上げていくことも必要です。それができるようになってはじめて、次の成長に向けた手立てが打てるのです」
知識が思い描く日本交通の未来像は「サービスの品質を高め、たとえば五ツ星の最高級ホテルと並ぶような高い評価を得る。そして全国のタクシーの30%をネットワーク化することを目標とし、業界のリーダーシップを取っていきたい」というものだ。
サービス品質を高め、仲間を増やし、利便性でも「黒船」の上をいく。川鍋と知識のコンビが日本のタクシーをどんな高みまで押し上げるのか。業界のみならず、日本中がその成否に注目している。
(文中敬称略)
1970年10月、東京都生まれ。創業者・川鍋秋蔵の孫。慶應義塾大学経済学部卒業後、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了、MBA。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2000年、入社と同時に取締役に就任。専務、副社長を経て05年8月、社長に就任。15年10月より現職。
1963年1月、兵庫県生まれ。県立神戸高校、同志社大学法学部卒業。85年、鐘紡入社。2004年5月~09年3月、カネボウ化粧品社長。10年6月~15年6月、テイクアンドギヴ・ニーズ社長。15年8月、日本交通社外取締役。同年10月から社長を務める。