キッズ担当乗務員の植木克俊(52歳)がこう話す。ふだんは通常のタクシー乗務をしているが、予約が入ると助手席側のドアに「キッズタクシー」のステッカーを貼り付け、朝夕は保育園や学校へ、夜なら塾への送り迎えを担当する。

(左から)JapanTaxi CTO 岩田和宏氏、JapanTaxi リーダー 若井吉則氏、日本交通 キッズ担当乗務員 植木克俊氏

植木の場合、1日のうちに通常で3件、多い日は5件ほどキッズタクシーの予約が入るという。常連も多く、「大きくなって電車で塾へ通えるようになった子が、最後のご利用のときに『長い間ありがとうございました。これからも元気でがんばってください』と手紙をくれたこともありますね。そういうときは、ほろっとしてしまって」。

その充実感で、丁寧な接客にますます磨きをかけるようになるという。たとえば、子供だけを塾へ送り届けたあとに送る親あての確認メールに、「今日はお昼にカレーを食べたよとおっしゃっていました」と追加したりする。

「親御さんたちはふつう『タクシーなんてどの会社も同じ』とクールに考えるものですが、キッズタクシーの仕事をしていると、日本交通のファンになってくださる方が多いのを強く実感します。それがうれしいですね」

そういって植木は顔をほころばせる。

さて、日本交通の現状を見て、社長の知識はどう考えているのか。

「弊社は真面目で誠実な社員が多いんです。安全や遵法に関する取り組みの濃さには驚きました。朝の出庫時には、点呼と社是唱和に続いて、大声で『行ってらっしゃい!』とやっています。日本の会社は、伝統的にこういう勤勉な現場に支えられてきたんです。ただ、業界の外からやってきた目で見ると、供給側の論理が優先されていることがあるように思います。まずは、そこを見直すことで収益の底上げができると感じています」