日本交通は売上高690億円(15年5月期、グループ企業・FCを含む)、タクシー4000台を持つトップ企業だ。業界全体が縮小傾向にあるなか、同社の売上高は、全国タクシーの運用を開始した12年5月期の630億円から655億円(13年)、675億円(14年)と前年比2.2%増から同3.9%増の成長を続けている。ただ、車両台数の全国シェアで見ると1.65%にすぎず、単独では影響力が限られる。川鍋が「仲間づくり」を急ぐのは、こういった事情も影響している。

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(上)タクシー最大手の日本交通も台数ベースで見ると、円グラフのように全国シェア1.65%にとどまる。(下)「全国タクシー」の配車可能台数は2万7000台となり11%を占める。

仲間づくりのために全国を行脚したのが、ジャパンタクシーのリーダー、若井吉則(42歳)である。

「北海道から九州、沖縄まで全国の主要都市をくまなく回りました。当初は『スマホでタクシーを呼ぶ』という習慣がなく、タクシー会社の方々に理解してもらうのは大変でした」

10都道府県13グループの8600台。11年のサービス開始時はその程度だったものが、若井たちの働きで、いまでは47都道府県154グループに広がった。配車可能台数は、法人・個人を含めた全タクシーの11%に当たる2万7000台に達している。

足元のチャンスを拾うことから

日本交通の「黒船」対策には、IT以外にもう一つの道がある。それが「エキスパート・ドライバー・サービス(EDS)」と名付けられた、時間制の貸し切りタクシーである。介助や救命関係など公的資格を持った乗務員を配し、行き届いたサービスを提供するのが特徴だ。11年8月にスタートし、現在は観光、サポート(介助)、キッズの3分野で営業している。

「私は自分の子供の小学校と高校でPTA会長を務めた経験がありますから、いまどきの親御さんのニーズがよくわかります。とくに女性の場合、面と向かってはいいにくいけれど、こうしてほしいというご要望をお持ちのことが多いんですね。EDSでも極力それをくみ取るようにしています」