需要縮小に悩む日本のタクシー業界に強力な敵が現れた。最大手・日本交通は創業家出身の3代目を先頭に反転攻勢の準備を急ぐ。勝負の行方は?

なぜ日本交通 代表取締役会長 川鍋一朗は、ジャパンタクシーの陣頭指揮にこだわるのか。日本交通本社を訪ねてみて、その疑問が氷解した。

実は日本交通本社とジャパンタクシーは、北区のビルの同じフロアを分け合っている。入り口に近いところにジャパンタクシーのスペースがあり、そこにITエンジニアを中心とした40人ほどが机を並べている。

オフィスを共用しているだけではなく、両者は同じ服務規程で働いている。ジャパンタクシーのみ服装は自由で、始業時間が午前9時と10時の選択制になっているほかは、基本的に同一の規程である。

IT業界の常識に照らせば、いかにも堅苦しい働き方だ。しかし「黒船」勝つには、そうでなければいけないという信念が川鍋にはあった。

日本交通 代表取締役会長 川鍋一朗氏

「全国タクシーは配車アプリとして日本で一番普及しています。今後は他社の配車アプリとの競争になるでしょうが、アプリはある程度洗練されてしまえば、技術では差がつかないと思っています。結局、お客様の心をどうつかむかがカギになります」

ジャパンタクシーにとって「お客様」は2種類ある。一つはタクシーの乗客、もう一つは配車アプリを使うタクシー会社や乗務員だ。乗客に選んでもらうのは大事だが、そこに注力しすぎると、結局は運賃をめぐる価格競争に行きついてしまう。すると残るのは、アプリを選ぶタクシー会社や乗務員の心をどうつかむか、ということだ。