2012年“和製LCC元年”といわれた年に就航した、ピーチ・アビエーション、ジェットスター、エアアジア。この中で、下馬評が最も低かったピーチだけが、上昇気流に乗り続けている。

なぜピーチだけが黒字化できるのか

「他社が西を飛ぶならウチは東へ飛ぶ。よその真似はしません」

「面白くないものはダメ。商品もサービスもみんなが驚くものでないとね」

重厚感のある風貌に似つかわしくない言葉がポンポンと飛び出す。ノリのいい発言の主は、ピーチ・アビエーションの代表取締役CEO井上慎一だ。

三菱重工を経て、全日空に転職した井上はアジア営業を長く務めた後、LCC立ち上げを命じられてアジア戦略室長に就任。退社して日本初のLCC、ピーチを設立した。

その視界は極めて良好だ。2015年3月期の営業収入は371億4100万円、営業利益は28億6500万円をあげ、2期連続で単年度黒字を達成した。平均搭乗率は、前期より2.2ポイント増の85.9%(有償ベース)。とりわけ、関西-仙台路線は90%程度と高く、同社全22路線の中でも、高い人気を誇る。累積赤字は約7億円まで減り、目標とする損失一掃の日も間近だ。

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(上)運航開始から3年、2年連続の増収増益を果たしたピーチ(下)2014年度実績他社比較

現在、日本には4つのLCCが存在するが、他社は苦戦が続いている。ジェットスター・ジャパンの今期の最終赤字は75億円を超え、累積赤字は300億円に達した。ANAが100%出資するバニラエアは黒字化には至っておらず、春秋航空日本も同様の状況にある。就航から1年でANAとの合弁を解消し、日本から撤退したエアアジア・ジャパンは、捲土重来を期して楽天と手を組み、16年春から就航を予定しているが、前途は未知数だ。

なぜピーチだけが早々に黒字化を果たし、躍進しているのか。ヒントは「関西」という言葉にある。