軽量化による効果も見逃せない。一般にチェックイン機の搬送や設置には大変なマンパワーを要する。トラックでの運搬費、昇降機の利用料や人件費、設置のための電気や配線工事費。トータルで何百万もの費用を覚悟しなければならない。
だが、このキオスクの重量は、大人の男性が1人で持てる程度。特殊なスキルも道具も必要ない。システムは前野をはじめ部署内の5人で管理しているため、外部に依頼すれば年間数千万円はかかるであろう保守管理費用もゼロ。一番詳しい人間が現場にいるので、何か起きたときは自ら修復できる。
このように開発から設置・管理まで自社で完結しているため、急な設置が必要というケースでも特別な費用は発生しない。今後ピーチの事業展開スピードが速くなっても対応しやすい。1台当たりの製造費用も通常の5分の1程度と安く、機能もアップ。三拍子そろったキオスクを実現できた理由を、前野は「勇気」という言葉で説明する。
「かつて在籍していたメーカーからすれば、こんな段ボール製のキオスクなんてありえない。もしものことを考えると踏み出せません。でも、そこにメリットがあるなら、勇気を出してチャレンジするのが我々のスタイルです」
誰かに持っていかれたらどうする。プリンターのスイッチを切られたらどうする。何か起きたら誰がどう責任を取るのか。起きてもいない事態に過剰反応してリスク回避に汲々とすれば、イノベーションなど生まれようがない。勇気はイノベーションと同意語だ。