超人と変態は紙一重?

【為末】僕がいつもすごいなと思うのはハンマー投げの室伏親子ですね。日本選手権の歴代優勝者を見ていくと、ハンマー投げのところだけお父さんの室伏重信さんと息子の広治さんの間に2、3人いて、基本的にはずっと室伏時代が続いてるんです。

【みうら】ジュラ紀、やたらなげえな、みたいなね(笑)

【為末】室伏さんがドキュメンタリーの撮影中にハンマーを投げてて小指を怪我をしたんですよ。それでレポーターが「広治さんが大変なことになって」お父さんに話したら「ああ、広治もそこまで来ましたか」って平然と答えてて(笑)お父さんはハンマーの投げ過ぎで小指がちょっと曲がっていて感覚がないんです。

【みうら】それは漫画家にとって「ペンだこができた」くらいな話なんでしょうね(笑)

【為末】広治さんはもうじゃんけんでパーができないんですよ。

【みうら】そこまでになって本物ということですね。世間と常識が違いすぎる。アスリートが極めると「超人」だけど僕らが極めると「変態」って言われるんですね。根本は同じなんですけどね。気持ちは体育会系ですよ。

【為末】えっ、ここに来てですか。

【みうら】精神は体育会系で、肉体が超文化系なんです。飽きても自分を騙してまでやり続けるなんて、男気しかないですよ。

【為末】僕はどちらかというと体育会系では浮いてますけどね。

【みうら】そこは逆だったんですね!

(了)

みうらじゅん 
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『人生エロエロ』、『正しい保健体育 ポケット版』など。最新刊は『ない仕事の作り方』。音楽、映像作品も多数。1997年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。2005年 日本映画批評家大賞功労賞受賞。 
為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。http://tamesue.jp
(大矢幸世=構成 遠藤素子=撮影)
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