低圧経済下で求められる処方箋とは

量的金融緩和という手段が麻薬のように危機感を薄れさせ、今すぐ手を付けるべき財政難、経済構造の変化への対応という難題は放置されたまま。安倍政権は先進諸国も量的緩和政策をとっていることを免罪符としているが、少子高齢化が加速する日本経済を同列に論じてよいわけがあるまい。

そして、量的金融緩和の副作用について、その危険性を認識しておく必要がある。日銀が国債を買い続けた結果、保有残高はわずか3年で3倍に膨れ上がっている。日銀のバランスシートの劣化が問題視される事態となれば、円相場の急落、国債価格の急落という負のスパイラルに陥りかねない。その際、いったい誰が責任をとれるのだろうか。

本書の著者は、福井俊彦元総裁と同期の日銀マン。もっとも、研究者ではなく現場を歩んだ実務派で、日銀退職後は民間金融機関等のトップを務めたキャリアの持ち主である。それだけに、伝統的な金融論に異議を唱える本書の内容には説得力がある。

タイトルを一見すると、初心者向けの入門書に思える。しかし、いざ読みだすと通貨の番人たる日銀マンとしての矜持が行間からにじみ出てくる。昨今、金融マンの間で注目を集めているというのもうなずけるところだ。

年明け後、株式市場は惨憺たる動きを続けている。米国市場、中国市場の下落を受けた側面も否定はできないが、アベノミクスのほころびを見越した日本経済の先行きを暗示していないという保証はない。

成長戦略を具体的なアクションプランに落とし込み、低圧経済からの脱却を目指す。量的緩和はあくまで緊急避難策であり、知恵を絞った一手を打つことこそ、為政者たちが専念すべき課題なのではないのだろうか。

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