当初、無料でユーザーを存分に楽しませ、その後に課金による収入を得るといったオンラインゲームを含むネット業界のビジネスモデルを「フロントエンド・バックエンド」という。自分たちの最高のサービスを無料で惜しみなく提供し、ユーザーの日常に組み込む。いわばユーザーにとってなくてはならぬインフラとなる。それに成功すれば、お金はあとからついてくる。
この「フロントエンド・バックエンド」は他の業界ではもっと早くから採用されている。藤原氏はこう話す。
「例えば、通信販売の健康食品では『1カ月間無料』『気に入らなかったら返品可』といった宣伝文句で試してもらい、その効果を実感してもらったあと継続して購入してもらうようにするのが得意。また、女性向け美容エステ・脱毛業界などは『今だけ、わき毛処理200円』と期間限定の超割安の料金設定によって定期的に店に通ってもらうことで、他のムダ毛処理や脂肪吸引をすすめたり、美容品を販売したり。そうやって“投資”を回収する。脱毛する女性が関心を持つ別のニーズに応えられるよう、脱毛運営会社が、旅行業や語学学校も手がけて、そちらへ客を誘導してグループ全体で儲ける作戦もあります」
まずは企業側が、客にとって価値のあるモノやサービスを安く売って(無料で配布して)集客し(=フロントエンド)、その後にしっかり利益を確保する商品を用意する(=バックエンド)。このやり方で回せば算段が十分に成り立つのだ。
前述したスマホ業界も、新規の客などに最初2年間、各種割引でかなりリーズナブルに利用してもらい、その後は正規の料金でじっくり回収し“黒字化”していくというプロセスは、このフロントエンド・バックエンドの一種と言っていいかもしれない。