日本再生のカギは何か──。日本の全企業数の約9割、全従業員数の約7割を占める中小企業経営者へアンケート調査を実施。成長企業と伸び悩み企業の比較から探った。

従業員数が増えるとなぜ生産性を落とすか

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図1:「成長企業」は3社に1社 図3:6社に1社は「従業員100人超」

アベノミクスで日本経済に明るい兆しが見えてきた。ただ、経営者が景気に一喜一憂しているようではいけない。今回、全国の中小企業経営者に実施したアンケートによると、5年前(2013年から)と比較して収益が「非常に良い」「良い」と回答した経営者は31.7%にのぼった(図1)。優秀な経営者は、景気が回復する前から企業を成長させてきたのだ。

景気が悪くても成長を続けてきた企業とそうではない企業は、どこが違うのか。5年前(2013年から)と比較して収益が「非常に良い」「良い」と答えた経営者が経営する企業を“成長企業”、「非常に悪い」「悪い」と答えた経営者の企業を“伸び悩み企業”として、2つの違いを分析してみたい。

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図2:元気が良い業種は「不動産業」「金融・保険業」

業種別にみると、不動産業が好調なようだ。成長企業が37.5%、伸び悩み企業が28.9%であり、成長企業の割合が上回った。以下、成長企業が多い順に金融・保険業の35.7%、建設業33.2%といった業種で収益状況が改善していることがわかる。

成長企業のうち従業員数が100人を超える企業は16.5%(図3)。このデータは、企業が成長した結果として従業員が増えたと解釈すべき。

業種によって異なるが、一般的に企業は100~160人を超えたあたりから人が急に増えはじめる傾向がある。

しかし、従業員数の増加は、企業にとって必ずしもいいことではない。ヒット商品で規模の急拡大は可能だが、よい人材は急には集まらない。一般的に利益率がもっとも高いのは、従業員数が30~40人前後のときだ。それ以上の規模になると、固定費が重くのしかかってくる。また、30~40人なら経営者が一人でマネジメントできるが、それを超えると組織をシステム化しないと回せなくなる。組織ができれば、内部営業が増加し、それが生産性を落とす原因になる。

規模が大きくなると、当面の売り上げを確保するためにノンコアの事業に手を出してしまう企業も多い。これも利益率を落とす要因になる。

『リピータビリティ』(プレジデント社)が実証しているように、コアがはっきりしている企業はブレないし、成長が堅実だ。例えばファスナーのYKKなどその典型であり、中小企業も同様だ。