後継者には親族を指名すべき理由
創業以来の年数については創業20年未満の企業は31.6%と3割を占める。若い企業ほど成長余地が大きいので、この結果は当然といえる。
むしろ注目したいのは、成長企業の24%が創業50年を超える老舗企業という事実だ(図4)。
成長が頭打ちになりやすい老舗企業の中でも、成長を続けられる企業は、おそらく環境への高い適応力を持っているのではないだろうか。大企業が餌場を求めて移動する動物ならば、中小企業の多くは、地域に根を張る植物である。植物が長生きするには、急激な天候の変化にうまく対応しなければならない。福井県内を例に挙げれば、機屋から家庭用シアターや会議用プロジェクターのスクリーンづくりへと転換した企業。あるいはメガネのフレームの部品づくりから、チタンの精密加工へと業務を拡大した企業など、コアを生かしつつ、果敢に自己革新を遂げている。
同族経営度はどうだろうか。役員や従業員に親族がいない会社は23.3%。後継者は「親族以外の役員・社員」と答えた企業は21.4%といずれも2割を占めた。(図5、6)。
後継者には親族を指名したほうがうまくいくケースが多い。後継者が血族だと社員が下手な色気を持たないので、組織内が荒れにくい。また後継者が血族ならば、社外に出して鍛えるなどして、効果的な後継者教育をすることもできる。同族経営は古いと思われがちだが、実態は違うことをあらためて強調しておきたい。
ここからは、成長企業と伸び悩み企業における夢や目標の違いに迫ろう。まずは成長企業が何を目標にしているのかを見ていこう。お手本にしている企業があるかどうかを尋ねたところ、「ある」と答えた成長企業が26.4%で、伸び悩み企業の19.0%を上回った(図7)。
成長企業、伸び悩み企業とも、お手本にしている企業名には著名な大企業が並んでいるが、成長企業は4位に伊那食品工業といった中堅企業もランクインしている。中小企業にとっては、雲の上の大企業より、自社よりも少し大きな企業のほうが経営の参考になる。成長企業の経営者は、その点に気づいているのだろう。
ただ、伊那食品工業などのやり方を真似ても、うまくいくわけではない。これらの企業がうまくいっているのは、すぐれたポリシーの結果とはいえ、すでに認知度が高く、いい人材が集まってくるからという面もある。人材難の中小企業が同じことをすると火傷する恐れがあるので、注意が必要だ。