「佃製作所」は長期雇用で安心して働ける

こうした資格や技能レベルは給与と連動するが、これは事務系でも同じだ。経理や営業職も先輩に教わりながら技能を磨いていく。その人の経験と能力に応じて昇給していくが、一般的に真面目に努力すれば年齢とともに自然に能力も伸長し、給与も上がる。

これが年功的賃金と言われるゆえんだ。

また、昇進においてもよほどのことがない限り、主任、係長、課長、部長に昇進していく。ただし、上にいくほどポストが少なくなるが、部長になれなくても給与体系は年功的に上がっていく仕組みだ。

もちろん大企業に比べて給与水準は低い。たとえば従業員1万人を超える精密機器会社の50歳の部長の年収は1300万円を超えるが、同業の従業員500人の会社の50歳の部長の年収は700万~800万円程度だ。

ただし、中小企業の場合は長く働ける。

大企業は60歳定年後、1年の有期契約社員に変わり、給与も半減するところも珍しくないが、中小企業は65歳定年も多く、60歳を過ぎても部長職を続け、定年になっても働き続ける人が多い。中には70歳近くまで働く人や70歳を過ぎても体力が続く限り働いている人もいる。

結論から言えば、佃製作所のような下請け企業の従業員の活躍を支えているのは、決して多くはないものの、それなりに家族を養える給与をもらい、長期雇用によって安心して働ける環境が整備されていることだ。

それともう1つは常に社長の顔が見えるところで働いていることだ。仕事や人生においても経験豊富な社長の薫陶を受け、その一挙手一投足に触れることで学びを得る機会も多い。

逆に社長を信頼し、この人についていきたいと思わなければモチベーションも下がるだろう。