まずは派遣と比較される概念である「正規雇用」について考えよう。私たちは、よく「正社員」とか「正規雇用」という言葉を使うが、じつは法律上の定義は存在しない。しかし専門家の間では、

・雇用期間の定めがない無期雇用であること
・その職場において標準的な労働時間(=フルタイム)で働くこと
・直接雇用されていること

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正規雇用の定義とは/「雇用」を3条件で分類すると…

という3条件を満たす働き方が正規雇用だという共通認識がある。図では、3条件のすべてが該当する中心部分が正規雇用である。

これに対して派遣とは、直接雇用ではない間接雇用を意味する。直接雇用の場合、企業と労働者という二者間の関係であるが、派遣の場合には、派遣元企業と雇用契約を締結し、派遣先企業から指揮命令を受けて働くという三者間の関係になる。

派遣といっても、その働き方は一様ではない。派遣には、無期か有期か、またフルタイムかパートタイムかの組み合わせにより、異なる4種類の働き方が存在する。つまり図のグレーの領域のすべてが派遣である。

また派遣労働者の意識にもバラツキがある。少し古い2012年の数字ではあるが、厚生労働省の調査では、派遣労働者のうち43.1%が自ら派遣という働き方を希望している本意型であるのに対して、「正社員として働ける会社がなかった」ことを理由として派遣として働いている不本意型は43.2%だった(※1)