理屈だけでは納得しない

問9「話の中に、『たとえば……』と自分の体験談を織り交ぜるほうだ」も、話し上手の条件です。たとえ理屈は正しくても、抽象的な話を聞かされるだけでは納得しないのが人間です。そこに具体的な話、身近な体験談が入っていれば、説得力がぐんと増します。

過半数の人がYESと答えていますが、こういう美点はぜひ伸ばしていってください。

興味深いのは、個人年収600万円以上の層ではYESが62%に達し、600万円未満では49%にとどまっていることです(図10)。抽象的に話すだけでは相手は納得しないし、部下ならばついてきません。会社での役職が上がるにつれ、そのことに気づいて修正するようになるということでしょう。

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図7・8・10

問16「人の話を聞くとき、『要するに』『つまり』と要約して返す癖がある」。話を要約できるのは、理解力が高いということ。そういう人は話すのもうまいことが多く、簡潔でわかりやすい話ができます。

ただし問題は、それが口癖になっているとしたら、聞き手に嫌みな印象を与えてしまうので、人から愛されない恐れがあるということです。人にものを伝えるときは、手際よく発信するだけではなく、受信する姿勢にも気をつけたいものです。

小山昇・武蔵野社長は「『人によく思われたい』なんて意識は、ゴミ箱に捨てよ」(http://president.jp/articles/-/13977)という記事のなかで次のように述べています。

「(酒席で社員の話を聞くとき)心がけるのは、『途中で遮らずに最後まで聞く』ということです。(略)『もうわかった、結論はこうだな?』と口を挟んでしまうと、不正確な情報しか得られません」

小山さんは「『立て板に水』は信頼されない」とも語っていますが、そのとおりだと思います。

アンケート結果からは、どんな環境で育つと話し上手(話し下手)になるのかも見えてきます。

話し下手だと自覚している人のうち、「物静かな家庭で育った」人は58%に上ります(図7)。逆に話し下手ではないと思っている人はわずか32%ですから、生育環境が大きく影響していることがわかります。

それだけではなく、物静かな家庭で育った人は、4割が「他人の服装や小物を褒めたことがない」と答えています(図8)。物静かな家庭とは、おしゃべりする人が少なく、笑い声もあまり響かない家と想像できます。そこで育つと、話すこと=伝えることにたいへん消極的な大人が育ちやすいでしょう。

「物静かな家庭で育った」人も、声に出して話す表現を増やしてみてほしいですね。