人材業界のグーグルを目指す

【南】5月から「スタンバイ」というクラウド型採用サービスを始めました。これを使うと、企業は無料で求人情報を作成、公開、管理できて、採用時の追加費用も一切かかりません。求職者も無料で利用できます。このサービスで、日本のすべての求人をインターネット上に可視化しようと思っています。

【田原】ちょっと待って。企業からも求職者からもお金を取らないとなると、ビジネスにならないじゃない。

【南】イメージしていただきたいのはGoogleです。Googleのサービスは無料で利用できるし、情報を検索結果に表示するときに企業からお金を取っているわけでもありません。では何で利益を得ているのかというと、広告です。「スタンバイ」も同じで、基本的に無料ですが、一定期間の中で大量に人を雇いたいなど特別なニーズがあるときは、追加で広告を買ってもらう。それが僕たちの収益になります。

【田原】それはおもしろい。僕はリクルートの江副浩正さんと何度も会ったことがあります。江副さんが企業側から金を取って広告だけの雑誌をつくるという画期的なことをやったけど、南さんはさらに画期的なことをやろうとしている。今後が楽しみです。

田原さんへの質問:優れた経営者に共通していることは何ですか?

【田原】話上手なのは、あたりまえ。僕が会った優れた経営者は、むしろ人の話をよく聞くタイプが多かった。たとえば松下幸之助さんが松下政経塾をつくったとき京都まで行ったんですが、当時40歳そこそこの僕の話を3時間も聞いてくれた。本田宗一郎や盛田昭夫、稲盛和夫さんもみんな聞き上手。

それから優れた経営者はネアカです。暗い人には人が寄ってこない。その点、南さんは外国育ちのせいか、明るくていい。ただ、外国育ちの人は、白黒をはっきりつけすぎる面がある。優秀な経営者は、グレーなところをのみこむ懐の深さを持っている。グレーゾーンで勝負できる老獪さがあれば、南さんはさらに一皮むけるんじゃないかな。

遺言:名経営者はみなネアカで、聞き上手

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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