ゴルフ場の土で3億人の目を救った

薬はどのようにつくられるかについて、以前この連載でも触れました。「新しい薬が世の中に出回るためには、こんなに手間暇がかかっている!」(http://president.jp/articles/-/13134)で紹介したうちのひとつが、自然界に生きているある種の細菌や木の抽出液などから取り出した物質を薬にする方法で、世界で初めて誕生した抗生物質のペニシリンもこのように発見されました。大村先生が取り組まれているのもこの方法で、イベルメクチンのもとになった放線菌は静岡県のゴルフ場の土壌から発見されたことは報道でご存知かと思います。日本でつくられた免疫抑制剤も、最初はこのような形で発見されました。

酸素や窒素、土の中にいる微生物など肉眼では見えないものが世の中の役に立つのですから、自然の力は偉大であり、そこに人類の英知が働くことで、可能性は計り知れなくなります。そしてその可能性すら見えていないことでも、それは今という時間軸で見えていないだけで、発見した途端に可能性が生まれます。

大村先生はいくつかの記事のなかで、自然界に生きる微生物は人類に役立つ宝だとおっしゃっています。自然をしっかり見つめると、いろんなヒントを与えてもらえると。私もその通りだと思います。自然の力は生命科学に活かされ、その結果、今までになかった世界が開かれてきました。