青みかんや青柿を使ったサプリメントも

梅エキスの製造開始は1998年。2002年には子会社を合併して中野BCに社名変更した。BCとはバイオケミカル・クリエーションの略であり、バイオ技術を中心とした研究開発型企業に脱皮するという幸生の強い思いが込められている。

日本酒、梅酒など中野BCの代表的な商品。

「社名変更では、お得意さんや関係者に意見をうかがいましたが、みなさん『面白いから変えろ』とおっしゃる。社員には『そんな社名じゃ商品が売れない』と不評でしたが。私は20数年前から時代のキーワードは福祉・環境・健康・通信だと思っていたんです。言い伝えに『梅が青く実ると医者が青くなる』とあります。それほど青梅には薬効があることを昔から人々は知っていた。それならば、我々の技術で、梅を活かして健康に役立つ機能性食品を作りたいと思ったのです」

中野BCでは、梅だけでなく、和歌山産の農作物を活かし、地元の活性化に寄与しながら、機能性食品を開発している。

2004年には青みかんと「じゃばら」と呼ばれる柑橘類を使った「アトピタン」という錠剤状のサプリメントを発売している。青みかんに含まれる「ヘスペリジン」と、じゃばらに含まれる「ナリルチン」にはアレルギー症状を緩和させる効果があり、花粉症やアトピーへの効果が期待されている。

2012年には、収穫前に間引きされる青柿を有効活用し、同社の独自技術で強い渋みを除去して、無味の粉末化に成功し、「パーシモンパウダー」として発売した。このパウダー開発では、農林水産省の助成を受け、岐阜県生物工学研究所(現在は廃止)などと共同研究の結果、青柿に含まれる「タンニン」が悪玉コレステロール(LDL)を減少させる効果があることがわかった。メタボリックシンドロームや高脂血症、糖尿病の改善効果が期待されている。

幸生は、青柿の商品化を模索しているときに、岐阜県生物工学研究所が青柿の効能の研究成果を発表したという新聞記事を見て、連絡も取らずにいきなり研究所に駆けつけたという。その行動力が同所との共同研究につながった。多くの研究機関との連携は、幸生の行動力と果敢な決断によるところが多い。

和歌山は柿の生産量が全国一だが、生産者の高齢化や後継者不足で年々、生産農家が減少している。収穫されることのない放置農地も増えてきたことから、和歌山県の依頼を受けた中野BCが活用法を模索、商品化に成功した。当初はクッキーなどパウダー入りのスイーツを菓子工房の協力で作ったが、売れ行きがよくないため、現在は成分を濃縮したサプリメントを開発中だ。