「かたい」準備と「ゆるい」空間のバランス
合宿のワークショップでは、僕がファシリテーターを務めてはいましたが、この2日間で話し合ってほしいことだけを伝え、初対面の参加者同士による話し合いに任せました。言ってみれば、“丸投げ”の状態です。
でも、この丸投げは“放置”ではありません。会場に市の職員が何人もずっと待機していて、参加者からの質問や要望にきめ細かく対応します。また、必要事項が書かれた資料や各種の書類などは、さすが行政マンが用意するだけあって漏れや抜けは一切なく、まさに事務的な準備は完璧です。
「かたい」必要があるところは、用意周到に、徹底的に準備する。でもその上で、“割り切れない”問題は、時間をかけてみんなで自由に対等に話し合う。この「ゆるい」話し合いにおいては、受け入れ側である市の職員も、「悩める当事者」の1人にすぎません。「かたい」準備と「ゆるい」空間のバランスが重要です。
参加者の皆さんを信頼して正解でした。かなり早い段階で「このプロジェクトは、自分たちで決めなければ物事が進まない」という「自治のムード」ができました。「リーダーを決めてください」などと言わなくても、自然と話し合いをまとめてくれる人がいて、他にも、活動のブログを編集する人、必要なシステムを担当する人など、自分の得意分野で貢献しようとする役割分担が起こりました。そんな感じで、初日の夜には、合宿中に必要な話し合いはほぼまとまり、職員の方たちも驚いていました。
合宿の最後、「本当にこんなにゆるいとは思わなかった、是非体験移住したい」と言ってくれた参加者がいました。「ゆるい」というのは「いい加減」だということではありません。実験的なプロジェクトが「不確実さ」を内包しながらも面白くすすんでいくためには、そこに関わる1人ひとりへの信頼とリスペクトが必要です。それをお互いに受け取り合った時、「新しい何か」の歯車が絶妙に動き出すのだと思います。