01年、中国はWTOに加盟した。外資企業がどんどん中国に進出してきた。だが、そのとき、楊氏の指揮のもとで、レノボはすでに中国国内に数千の販売代理店を持ち、地方の小さな都市にまで網を広げた。代理店は直接聯想から仕入れ、仕入れルートが短いだけに反応が早く、商品の値段も安い。クレームがきた場合も迅速に対応できる。アフターサービスも聯想のコールセンターは24時間、年中無休で対応する。電話の問い合わせで解決できない問題に対しては、全国500カ所のサービスセンターから技術者を出して訪問サービスを提供する。心血を注いで構築したこのサービス体制がレノボの躍進の土台をつくった。

米誌「フォーチュン」の「中国で最も影響力のあるビジネスリーダー50人(13年)」で第3位に選ばれる。(写真=時事通信フォト)

そして、04年末、レノボグループの会長になった。その楊氏はいま、多国籍企業へと成長したレノボを率いている。そのスローガンは「卓越した企業をつくろう」ということだ。最後までお金云々を言っていない楊氏は、中国のニュータイプの富豪として尊敬の念で見られている。

楊氏のサクセスストーリーは多くの中国人にヒントを与えた。目の前にある既成の成功の道よりも、潜在的な成長性のある企業や事業に懸けたほうが長い目で見れば、自分の人生によい、という選択肢も考えるべきだ。こうした価値観の判断に支えられ、今世紀に入ってから、中国の外資企業に勤めていた多くの中国人は敢えて所得が高い外資企業での地位を捨てて、まだ成長途上の中国の民族系企業に転職した。ある意味では、彼らも楊氏のシンガポール留学を放棄したときと同じような決断を下していると言えよう。

楊元慶
1964年、中国安徽省合肥市生まれ。89年、レノボ(当事の社名はレジェンド)入社。94年、PC事業の統括責任者となり、2001年、レノボ・グループCEOに就任。04年、会長就任。リーマンショックで低迷した業績を立て直すべく、09年、CEOに復帰。レノボを3四半期連続の最終赤字から復活へと導く。
(時事通信フォト=写真)
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