国は「朝の違法残業」を取り締まらない

会社を早く出ることはワーク・ライフ・バランスの観点からも推奨されている。会社にとっては時間外勤務手当の削減につながり、社員にとっても私生活や家族との時間を享受できるウインウインの施策といわれる。

だが、実態は“持ち帰り残業”や“朝型サービス残業”を生み出しているのだ。つまり、朝型勤務が違法残業の温床になっている可能性もある。

そうであるなら政府は朝型残業を徹底して取り締まるべきなのだが、そういう気配はない。今年4月20日、塩崎恭久厚生労働大臣は経団連に「夏の生活スタイル変革」と題する要望書を提出し、経済界として朝型勤務の導入を図るように要請した。

著者の溝上憲文氏が多くの企業人事部などを取材し、知られざる人事部の「腹の内」をレポートした最新刊『人事部はここを見ている!』(プレジデント社刊)。

そしてご存知のように朝型勤務を導入する企業が増えている。しかし、どういう仕組みを作るかは企業の自由である。下手をすれば、残業代を支払わないままに朝型サービス残業が蔓延する可能性もある。政府・厚労省はこれまで長時間労働を削減するために違法残業など夜の残業を徹底的に取り締まってきた。

しかし、朝の違法残業を取り締まらない限り、夜の残業は減ってもトータルの長時間労働は変わらないことになる。朝型サービス残業を取り締まらずに経済界に朝型勤務を要請するのは本末転倒ではないか。

朝型勤務を始める企業の多くは始業時間を早める仕組みを導入しようとしている。1時間早くすれば、当然終業時間も1時間短くなり、早く帰れるはずである。

だが、始業時間を早くしても延々と残業する社員も増えるのではないかという声も人事関係者の中で上がっている。そして朝型勤務の開始にあたって職場ではとんでもないことが起こっている。

次回は職場でどんな問題が発生しているのかを報告したい。

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