歯科医の分析「錦織のガミースマイルは……」

錦織の場合、この歯並びに加えて、前述したように顎の位置の偏り問題がある。

「顎の位置が偏位している状態では打球も不安定になっているかもしれませんね。その点、(世界ランキング1位の)ジョコビッチやシャラポワの歯はバランスがとれていて、動きも滑らかでいい意味で余分な力が抜けています」

佐藤によれば、この「余分な力が抜けている」ということがアスリートには特に大事だと語る。

「口元をよく観察すると、特にジョコビッチはボールを打つ瞬間、口を開いた状態でボールを打っていることが多いようです。テニス選手が試合中、よく大きな声を出しますが、それは精神集中の他に歯が噛み合うのを避けるための無意識な行動となっているのかもしれません。通常、人はリラックスしている時は安静位と言って、上下の歯は噛み合わずに1~2mmあいているものなのです。ですから、試合中に歯が噛み合うのを避けているのはそれだけ余分な力が抜けているということでしょう」

▼笑うと歯茎が多く見えるのは問題あり?

また、錦織は笑うと歯茎が人より多く見えるが、これについては競技上問題がないのか?

「ガミースマイルのことですね。ガミーそのものには問題ありませんが、ガミーになるということは歯の生え方などに問題があるということでしょう」

では、錦織は歯列矯正をすればいいのか?

「いや、歯列矯正は2~3年かかりますし、歯の見た目と機能は必ずしもイコールではない。今の錦織選手には負担もリスクも大きすぎます」

ということは、もはや錦織の歯はもはや処置なし、手遅れなのか?

「そんなことはありません。カスタムメイドの装置を使ってあごの位置を矯正する“顎位矯正”をすればよいのです。顎位矯正の装置はいつでも外せますから、リスクも低いです。ゴルフだと、顎位を治すと飛距離が50ヤードは違ってきますから、テニス選手がここを治せばサーブのスピードが数%は上がり、ショットの正確さも増すでしょう。実際、私には錦織選手の歯並びが球筋に悪影響を与えてるように見えます」

多くの一般人の“顎位矯正”(顎ズレの治療)にあたっている佐藤によれば、歯並びや噛み合わせの不調和が顎ズレを起こし、強く噛みしめることで様々な症状が出るとのこと。そのメカニズムは、顎ズレにより顔の歪み、姿勢の歪みという骨格の歪みと共に、付着している筋肉の緊張にアンバランスが生じて血行不良が起こる。それが、頭痛・肩こり・腰痛などの痛みとして発現する。したがって、顎位を正しい位置に誘導・矯正すると歪みがとれ血流が回復し、痛みがとれたり、体調維持・向上したり集中力アップしたりといった効果的な結果が得られるという。

佐藤は、錦織にぜひ直接聞いてみたいことがあるという。

「錦織選手は、首や肩が凝ることはないのですかね? アスリートだから、運動で解消しているのでしょうが……あと、耳鳴りはないのでしょうか? 一般に、キーンと高い音が聞こえるときは奥歯がすり減っていて、ボワーンと低い音のときは前がすり減っていると言われます」