錦織圭が棄権した。
全英(ウィンブルドン)オープン2回戦直前、当初より傷めていた左ふくらはぎの状態が思わしくないという理由で棄権を発表。会見で「この(2回戦の)試合はできても、勝てはしないと思ったのでやめた」と悔しそうな表情を浮かべた。
この一報を受け、英語・スペイン語同時通訳・翻訳者で、『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)を手掛けるなど、国内外のスポーツ選手と広く深く交流しているタカ大丸氏が「スポーツ選手と歯」に関する注目すべき持論を展開する。

芸能人は歯が命、アスリートは歯が全て

これまで、私はさまざまなスポーツを職業とするアスリートと会ってきた。

競技名で言うと、プロ野球、Jリーグ、ゴルフ、プロレス、カヌー、ボクシング、Pride、競輪、そしてテニスもいる。その中で、「歯」がいかに大切なのかを痛感させられてきた。

私が歯に着目するようになったのは、友人の元プロ野球選手・カズ山本(山本和範: 1999年までの23年間プロ野球界に在籍)との会話がきっかけだった。

ご記憶の方も多いと思うが、カズ山本は何度クビになってもバッティングセンターで練習しては別の球団と契約。バッファローズとホークスで42歳まで活躍し、現役最後の打席を本塁打で締めくくった男、本気で漫画『あぶさん』の主人公より選手生活を長く続けようとした男、究極の「野球バカ」である。

そんな彼に、私はあるとき疑問をぶつけたことがある。

「カズさん、清原(和博)さんが本塁打王になれなかったのは、歯が原因ではありませんか?」

するとカズ山本はしばらく目を閉じ、腕組みをしてから答えた。

「一概には言えないけど、歯は大事だと思うよ……」

そして続けた。

「オレも20代後半に腰を痛めてバットを振れなくなったことがあってな。そのとき、“テンプレート”という器具で奥歯のかみ合わせを矯正したら、腰痛が消えて、しかも偏頭痛もなくなったよ。あと、二日酔いすることもなくなった。オレが42歳まで現役でやれたのは、歯を治したおかげだな」

▼アスリートと歯の関係

「歯で活躍・飛躍」したのは最近で言えば、メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツ、青木宣親選手だ。プロ1年目のヤクルト・スワローズ時代、フレッシュオールスターでMVPを獲得し、賞金の100万円を全額歯の矯正に投資した。その後の活躍については、ここで言うまでもないだろう。

アスリートにとって歯並びや噛み合わせなどは、パフォーマンス向上はもちろん、ケガ防止にもつながることは多くの歯科医が認めている。

そこで、俎上に載せたいのが、錦織圭だ。