サーバント・リーダーの特徴は傾聴、共感など10の項目にまとめられる。相手の立場に立って相手の気持ちを理解する「共感」といった側面に加え、現在と過去の出来事を照らし合わせ、将来を予想する「先見力」などが必須である。
▼サーバント・リーダー「10の特性」
【1】傾聴
相手が望んでいることを聞き出すために、まずは話をしっかり聞き、どうすれば役に立てるか考える。また、自分の心の声に対しても耳を傾ける。
【2】共感
相手の立場に立って相手の気持ちを理解する。人は不完全であるという前提に立ち、相手をどんなときも受け入れる。
【3】癒やし
相手の心を無傷の状態にして、本来の力を取り戻させる。組織や集団においては、欠けている力を補い合えるようにする。
【4】気付き
ものごとをありのままに見ることによって、気付きを得ることができる。相手に気付きを与えることもできる。
【5】納得
相手のコンセンサスを得ながら納得を促すことができる。権限に頼らず、服従を強要しない。
【6】概念化
大きな夢やビジョナリーなコンセプトを持ち、それを相手に伝えることができる。
【7】先見力
現在の出来事を過去の出来事と照らし合わせ、そこから将来の出来事を予想できる。
【8】執事役
自分が利益を得ることよりも、相手に利益を与えることに喜びを感じる。一歩引くことを心得ている。
【9】人々の成長への関与
仲間の成長を促すことに深くコミットしている。一人ひとりが秘めている力や価値に気付いている。
【10】コミュニティづくり
愛情と癒やしで満ちていて、人々が大きく成長できるコミュニティをつくり出す。
この10の特徴のなかで、とりわけ重要なのが、第一の「傾聴」である。傾聴には2つの役割がある。まずは人の話を聞く力。現在のように変化が激しい環境では有能なリーダーが自分の経験に基づいて決断を下しても、経験した時点とは状況が変化しており、「ちょっと前なら正しかったが……」という事態が頻繁に起こる。従業員の話を真摯に聞かないでいると、顧客や市場の変化に気付くのが遅れ、打ち出す方向性にズレが生じやすくなる。その点、聴く力にすぐれたリーダーは環境に変化が生じても素早く察知することができ、方向性を間違えるリスクが少ない。
「話を聞いてもらえた」という気持ちから、従業員のコミットメントも引き出しやすい。
もう1つの意味は、リーダー自身が自分の心の声を聞くことだ。リーダーの「こうしたい」という思いは、自分勝手なものになる可能性がある。極めて個人的な思いを実現するために、周囲を巻きこもうとするのだ。結局それでは人はついてこない。常に自分が示したミッション、ビジョンは社会の役に立っているかと見つめ直すことが必要になる。