なぜあの上司に人はついていくのか──。彼らが無意識にでも実践しているリーダーシップ哲学がある。もはや「オレについてこい!」だけで部下は動かない。今、注目を集める理論を紹介しよう。

「優しい人」とはどこが違うのか?

「召し使い」を意味する「サーバント」と、組織を導く「リーダーシップ」という正反対の言葉を結合させたサーバント・リーダーシップとは「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後に相手を導くものである」というリーダーシップ哲学である。この理論は部下に対して明確なミッションやビジョンを示し、それを遂行するメンバーに奉仕するリーダーシップと定義される。

上司は自分のミッション、ビジョンを実現させるための道具として部下がいると考えるのではない。それを実現するためにメンバーが行動してくれる。ゆえにそのメンバーがより活躍しやすいようにと環境を整え、支えるのがリーダーの役割だと考えるのだ。

サーバントの部分に注目が集まって、リーダーはメンバーを支えるだけでよいという誤解があるが、それは違う。リーダーは「こうしたい」という強い方向性を示す必要がある。が、その方向性が自分勝手なものであっては、サーバント・リーダーとはいえない。社会に貢献し、利益を生み出すといった価値ある目標を示し、それに取り組むメンバーを支えて、彼らに奉仕するのがサーバント・リーダーなのである。

ロバート・K・グリンリーフによってサーバント・リーダーシップが提唱されたのは1970年だが、日本で知られるようになったのは最近である。近ごろ、この理論がメディアで取り上げられる機会が増えた。注目される理由としては、昔ながらの「支配型」リーダーとは異なるサーバント・リーダーの活躍が目立つようになってきた点が挙げられる。