中国は本当に台湾に侵攻するのか。軍事アナリストの小川和久さんは「侵攻すれば経済制裁や軍事的失敗のリスクを抱えることになり、割に合わない選択だ。だが、指導者が常に合理的に判断するとは限らない」という――。

※本稿は、小川和久『13歳からの戦争学』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。

「中国の台湾侵攻」は単なる噂ではない

台湾海峡をめぐる緊張は、いま世界でもっとも危険な発火点の一つといわれています。「中国が台湾に侵攻する」という話は、単なる噂ではありません。

中国は2025年だけを見ても2回も台湾周辺で大規模な軍事演習を行っており、台湾の防空識別圏への中国軍機の侵入は日常的に行われています。だから、実際に起こりうるシナリオとして、各国の軍事専門家が真剣に分析しているのです。

なぜ、中国は台湾を狙うのでしょうか。それを理解するには、中国と台湾の歴史をさかのぼる必要があります。

1949年、中国では共産党と国民党による内戦がありました。共産党が勝利し、毛沢東もうたくとうが中華人民共和国を建国しました。一方、敗れた蔣介石しょうかいせき率いる国民党は台湾へ逃れ、そこで「中華民国」政府を存続させました。つまり、一つの中国に二つの政府が並び立つことになったのです。

中国共産党は「台湾は中国の一部であり、いずれ統一する」と主張し続けています。これは中国にとって単なる領土問題ではなく、共産党の正統性そのものに関わる問題なのです。

習近平国家主席は「台湾統一は中華民族の偉大な復興の一部だ」と繰り返し述べ、「武力行使も辞さない」とも明言しています。

習近平国家主席
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
河北省雄安新区において、雄安新区の質の高い建設と発展をさらに推進するためのシンポジウムを主宰した習近平国家主席(2026年3月23日、雄安新区)

中国は準備を着々と進めている

中国の軍事的な準備はどうでしょう。

中国は、台湾侵攻に向けて着々と準備を進めています。人民解放軍はこの20年間で劇的に近代化しました。空母を建造し、最新鋭の戦闘機を配備し、精密誘導ミサイルを大量に保有しています。とりわけ台湾に照準を合わせた短距離・中距離ミサイルは、2000発以上にのぼると推定されています。

中国軍は、台湾周辺で頻繁に軍事演習を行っています。2022年8月、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問した際、中国は台湾を取り囲むように大規模な軍事演習を実施しました。これは事実上、台湾封鎖を予告するものでした。

さらに、中国軍の戦闘機や軍艦が台湾の防空識別圏に侵入する回数は年々増えています。2023年には年間約1700機でしたが、2024年には急増して約3600機と過去最多を記録。さらに2025年は1~2月だけで約740機と、前年同期の約4倍のペースで推移しています。

これは台湾軍を疲弊させ、いざというときに十分な対応ができないようにする狙いがあります。