台湾有事が起きた場合、日本はどんな影響を受けるのか。軍事アナリストの小川和久さんは「台湾から与那国島までわずか110km。食品や半導体が手に入らなくなり、数十万人の難民が押し寄せる可能性もある。『台湾有事は日本有事』という言葉は、決して誇張ではない」という――。

※本稿は、小川和久『13歳からの戦争学』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。

2022年10月23日、北京の人民大会堂で中国および海外の記者に向けて演説を行う習近平総書記
2022年10月23日、北京の人民大会堂で中国および海外の記者に向けて演説を行う習近平総書記(画像= China News Service/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

台湾~与那国島は東京~熱海と同じ110km

台湾で戦争が起きることは、日本にとって「遠い国の出来事」では決してありません。地理的にも、経済的にも、安全保障上も、日本は直接的かつ深刻な影響を受けることになります。

台湾から日本の与那国島までは、わずか110キロメートルしか離れていません。

2025年11月7日の衆院予算委員会で、高市早苗首相は台湾有事が「存立危機事態」に該当し得ると述べ、従来の政府見解から踏み込んだ発言として注目されました。具体的には、「戦艦を使って武力の行使も伴えば、どう考えても存立危機事態になり得る」と発言しています。その根底には、日本側の危機感が横たわっています。

沖縄本島から台湾までも600キロメートルほどしかありません。ミサイルなら数分で届く距離です。戦闘が激化すれば、流れ弾のように日本の領土に着弾する可能性もあります。

さらに深刻なのは、与那国島や石垣島に日本国民が暮らしているということです。戦争が始まれば、これら約1万7000人の島民を避難させなければなりません。しかし、数日で1万人以上を避難させることは容易ではありません。

台湾と日本は目と鼻の先
出所=『13歳からの戦争学』(アスコム)

嘉手納基地は台湾防衛の最前線になる

台湾有事において、中国がもっとも警戒するのは在日米軍の介入です。

沖縄の嘉手納基地は東アジア最大の米空軍基地です。嘉手納基地から台湾までは約600キロメートル。戦闘機が出撃する場合、実際の作戦飛行ではさまざまな要因を考慮する必要がありますが、真っ先に駆けつけて中国軍と戦闘に入ることになるでしょう。

岩国基地の海兵隊航空部隊、横須賀の第7艦隊、これらはすべて台湾防衛に不可欠な戦力です。

全国の主な米軍施設
出所=『13歳からの戦争学』(アスコム)

日本列島はアメリカの戦略的根拠地であり、いわばカリフォルニア州と同じ重要な位置づけにあります。日本列島への攻撃はアメリカとの全面戦争を意味します。そのリスクを中国がとる可能性は高いとはいえませんが、ここでは中国が持つ能力を紹介しておきます。

中国の軍事戦略には「A2/AD(エーツーエーディー)」〈接近阻止・領域拒否〉という考え方があります。これは米軍を中国本土に近づけないようにすることを目指すものです。

この考えのもと、中国は日本列島から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオへと連なる第1列島線、伊豆諸島からグアム・サイパンを経てパプアニューギニアへ続く第2列島線を設定しています。