本当に「普段通り」でいいのか
「普段通りの給油を」。3月中旬、経済産業省はメディアや政府広報を通じて、こう呼びかけた。3月19日出荷分からガソリン価格を引き下げるために補助金を出すほか、備蓄原油の放出で、1リットル=170円にするので、心配しないでほしい、というわけだ。
イランがホルムズ海峡を封鎖する中で、原油輸入の9割を中東に依存している日本での石油製品不足が懸念されているが、4月中旬になっても、高市早苗首相自ら、「日本には約8カ月分の石油備蓄があり、放出量を抑えながらも、年を越えて石油の供給を確保できるメドがついた」と語るなど、問題はないとの姿勢に終始している。
もちろん、危機感を過度に煽る必要はないが、国民は本当に「普段通り」の生活を続けて良いのだろうか。朝日新聞は社説で「長期化を見据え、無理のない範囲での需要の抑制策に舵を切るべきだ」と主張していたが、高市首相は「経済活動にブレーキをかけるような形で、今すぐ節約して下さいと申し上げる用意はない」としている。
「約250日分」にナフサやLPGは含まれない
4月11日~12日に行われたイランと米国の直接交渉は決裂し、ドナルド・トランプ大統領は、逆に「ホルムズ海峡を封鎖する」とSNSで表明した。イランが通行料を取って、非敵対国のタンカーを通過させるとしたことに対抗する措置と見られるが、海峡を巡って再び戦闘が開始されれば、原油不足は長期化し、世界経済に深刻な打撃を与えることになりかねない。中でも日本への影響は大きい。
政府は日本の石油備蓄は2025年12月末時点で約250日分あると主張している。政府の国家備蓄が約146日分、石油元売り会社が保管する民間備蓄が約100日分、原油国との共同備蓄が5日から7日分というのが内訳だ。この1日分という計算根拠は約170万バレルという消費量を前提にしているが、その対象はガソリンや重油、石油製品のみの計算で、ナフサやLPG(液化石油ガス)は含まれていないという。これを含めると消費量は314万バレルとなり、備蓄は100日分前後ということになるというのだ。のんびりと「普段通り」と言っている場合なのか。

