特定の石油化学製品だけが不足することはあり得る
4月11日のTBS「報道特集」では「ナフサ由来の一部石油製品が供給不足、身近な現場に広がる切実な声」とする特集を放送。塗料などの溶剤として使われるシンナーが、欠品で手に入らないという塗装業者の切実な声を伝えていた。赤沢亮正・経済産業大臣は「足元では供給の偏りや流通の目詰まりが、かなりひどくなっている」とし、流通の目詰まりが原因だと語っていたが、業界団体の日本塗料商業組合は「私たちが大量に在庫を抱えているわけではなく、目詰まりを起こしているわけでもありません」としていた。
原油は精製されて様々な石油化学原料が作られるが、精製比率(得率)はガソリンが約31%、ナフサが約10%、軽油が約25%、重油が約16%などとなっている。ナフサなどからは様々な石油化学製品が作られる。一方の需要はこの比率通りではないため、製品によっては過不足が生じることになる。原油からナフサだけを作るということはできないわけだ。
つまり、計算上では原油は必要な量を確保できているとしても、特定の石油化学製品だけが不足することは十分にあり得るわけだ。もちろん、特定の製品だけを輸入することも可能だが、原油の世界的な供給量が大きく減っている中で、調達できる保証はないし、調達できたとしても価格が大幅に上昇するリスクがある。
経産省に伝わる第一次石油危機の「教訓」
今回の戦争で、サウジアラビアのパイプラインや油田の生産設備も攻撃を受け、同国の生産能力は一時、日量約60万バレルまで減少した。また、イラク南部での生産が8割減となるなど打撃を受けている。国際エネルギー機関(IEA)の分析では、世界需要の約1割に相当する量の生産が湾岸諸国で減少している。今後、ホルムズ海峡の封鎖が続けば、さらに供給が減る可能性が高い。
経済産業省が「普段通り」を強調する背景には、買い占めによる価格上昇など混乱を防ぎたいという思いがあるのだろうが、そのほかにも理由がある。第一次石油危機当時の「教訓」として省内に伝わっているのは、「価格は上昇したが量は確保できた。資金さえあれば、輸入することができる」というものだ。
だが、今回もその「教訓」は生きているのだろうか。円安が進んだことで、様々な海外資源の「買い負け」が起きていると言われ続けてきた。日本円の購買力が落ちている中で、量は確保できると言い切れるのか。また、日本円建てにして高価な原油を国民が買うことができるのか。国民が買えるように長期にわたって補助金を出し続ければ、財政悪化懸念からさらに円安が進み、価格を押し上げることになりかねない。

