人生の目標:なぜ富豪は資産を寄付したがるのか
ミリオネアは人生を長期的な視野でとらえていると本田氏は指摘する。
「一代で財を築く人は、人生をマラソンのようなものだと考えています。視線の先にあるのは遠い先にある目標です。目標達成に向けて、いま自分が何キロ地点にいるのかを意識しながら毎日努力を続けています」
実際にミリオネアが掲げている目標は壮大だ。マダム・ホーの場合、短期目標は日本の小口投資家の救済だ。
「バブルが盛り上がったころ、証券会社は主婦にも株の購入を勧めてきました。しかしバブルがはじけて、救済されたのは大手企業だけ。馬鹿を見たのは庶民の小口投資家です。私は外国暮らしですが、どこに行っても日本人だということでよくしてもらえた。それはいままで日本人が各地で誠実な行動をとってきたから。私は日本に恩返しをしたい。だから本業とは別に、日本で小口投資家のための著述活動を行っているのです」
中期・長期目標はもっと大きい。中期目標は、日本とアメリカの将来を担う若者のために学部やNPOをつくること。長期目標は、母の名前を冠したホスピスをつくることだ。
「若者のための奨学金をつくりました。でも、まだ道半ばです。学部をつくるには35億円が必要。長期目標のホスピス建設には、もっとお金がかかります。人は私たちを見て十分に稼いだというけれど、ネバーイナフ。お金は目標を達成するためのツールにすぎませんが、あればあるほどいい」
松田氏が掲げる目標も大きい。最終目標は、「この世から労働者をなくすこと」だ。
「私は1億総株式会社化して全員が社長になれば、社会はもっとよくなると考えています。そのためにいま武蔵野学院大学と産学連携で、スモールミディアムビジネスの研究所をつくりました。ゆくゆくは私の経営資産をベースにしたビジネススクールをつくり、全員を起業家として世に送り出したい」(松田氏)
マダム・ホーと松田氏の目標は、社会に深くコミットするものだ。本田氏はこう分析する。
「大豪邸に住んでも、友達がいないと人生はつまらないですよね。だから目標も、自分だけが楽しいというものではなく、誰かが喜んでくれることへと変わります。マラソンで言うと、ミリオネアになるのは10キロ地点の目標。その先は突き抜けた目標になる。この傾向は、若い世代のミリオネアほど強い」
経営コンサルティング、会計事務所など複数の会社を経営する「お金の専門家」。著作シリーズは累計520万部を突破。主な著書に『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』など。