原点は「包装は商品の晴れ姿」

2007年に星野は役員から若手まで14人を集めた「LIFEプロジェクト」を立ち上げた。社員がLIFE(人生)を託したいと思える会社にするための特別チームだが、本当の狙いは、クリーンルーム新工場を建設するための推進力だった。コテ先で改革を進めても顧客の満足を得られない。他社が追いつけないほど高い水準の安全管理を実現するためにクリーンルームを作ろうと星野は考えたのだ。

クリーンルームにするだけではない。無駄を省き、生産効率を上げ、高品質・多品種・少量生産・短納期を実現できる製造ラインを作るために事業計画を練り、投資額を見積もると、なんと当時の売り上げと同じ30億円もかかることがわかった。

父がその計画を知るや激怒し、星野の作った計画書を突き返した。だが、あきらめない。なぜ反対なのか理由を聞き、突き返される度に反対理由をつぶしていった。LIFEプロジェクトのメンバーとトヨタ生産方式などを学び、ムダ取りの方法も現実的に考えた。

何回も繰り返すうちに事業計画は地に足のついたものになり、金融機関も融資を引き受けた。神奈川県や横浜市からも助成を得られることになった。父は、最後まで納得しなかったが、星野は押し切った。こうして、09年に新工場が完成し、顧客から高い評価を受けることになった。

「新工場ができた当初、社員は帽子をかぶることさえ抵抗があったんです。しかし、時代が変わればルールも変わる。時代を元に戻せないのだから、企業は自ら変わるしかありません。それをするのがトップの仕事にほかなりません」

横浜リテラは星野のリーダーシップの下、1997年に社名変更とCI(コーポレイト・アイデンティティ)の導入を行った。そこが経営改革の始まりだったであろう。星野は若手を中心に社員を集めて、自社のアイデンティティを「パッケージは生産者の思いを伝えるコミュニケーションツール」とした。

「実は創業時代から当社にはそうした思いがあり、父も『包装は商品の晴れ姿』とよく言っていました。原点に戻っただけなのかもしれません」

それは星野の中にもしっかりと創業の精神が引き継がれていることの証だろう。(文中敬称略)

株式会社横浜リテラ
●代表者:星野匡
●創設:1933年
●業種:印刷紙器・宣伝用POP・シール・紙加工品など各種印刷物の企画、デザイン、印刷、加工、販売など
●従業員:206名
●年商:45億円(2014年度)
●本社:神奈川県横浜市
●ホームページ:http://www.yokohamalitera.com/
(日本実業出版社、横浜リテラ=写真提供)
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